日本病院総合診療医学会雑誌
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総説
腹部単純X線検査でわかること
本田 善子
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2012 年 3 巻 1 号 p. 37-40

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抄録
日常診療の中で腹痛は頻度の高い主訴である。 その中で緊急性を問われる「急性腹症」については限られた時間内で手術や緊急処置の必要性を判断しなければならない。腹部単純X線検査は一般検査に含まれる「画像検査」であるが,超音波やCTの急速な普及により,その存在意義が問われている現状にある。 しかし撮影が簡便,腹部全体の情報収集が可能,CT検査に比べて被曝線量が極めて低いなどの利点もあり,初療の段階で撮影される場合も多いと考えられる。 腹部単純X線検査で描出されるものには,ガス像(消化管内外),軟部組織や腫瘤陰影,腹腔内貯留像,石灰化像や異物などがある。 遊離ガス像は,消化管穿孔の診断に極めて重要な所見であるが,腹部単純X線では検出率約 70 %である。 穿孔以外にも腸管気腫性嚢胞症により遊離ガスが出現することがある。 肝臓に一致したガス像では,門脈内ガス,胆管内ガスが見られる。 門脈内ガスでは腸管壊死を疑う必要があり,腸管麻痺や壁内ガス像の有無に注意が必要である。 多量の消化管ガスは腸閉塞に代表される。最も重要なのは,緊急性の高い絞扼性腸閉塞の鑑別である。 絞扼性腸閉塞ではclosed loopを形成し内腔には液体が貯留してくるためX線で無ガス像を形成する。腹部単純X線で診断が容易な疾患としてS状結腸捻転のcoffee bean signがある。回盲部捻転症も盲腸の拡張と位置異常そして盲腸の右側に小腸ガスが存在するなどの特徴的所見がある。 石灰化像や結石陰影では,胆石,腎結石,虫垂結石や子宮筋腫などがある。 特に胆石イレウスでは,小腸閉塞像と腸管内の結石像および胆道内ガス像が描出され,単純X線のみで疑うことができる疾患のひとつである。 腹部単純X線の利点を更に生かしていくためには,各診療医の読影能力をより高める努力が必要と思われる。
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© 2012 日本病院総合診療医学会
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