日本病院総合診療医学会雑誌
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総説
ウイルス性肝疾患におけるFibroScan (非侵襲的肝線維化評価)の臨床的有用性
小川 栄一古庄 憲浩林 純
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2012 年 3 巻 1 号 p. 41-47

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抄録
慢性肝疾患の予後は,しばしば肝線維化の程度により決定されるため,その評価は非常に重要である。 2005 年にフランスで開発されたFibroScan(フィブロスキャン)は,肝臓の弾性度を迅速に,非侵襲的に定量評価ができ,繰り返し測定できる利点がある。 著者らは,B型・ C型慢性肝炎患者に肝生検による肝病理組織評価とFibroScan測定を行った結果,非常に高い相関が得られた(HBV : r = 0.725,P < 0.0001,HCV : r = 0.807,P < 0.0001 )。 抗ウイルス治療による経時的な評価を検討した結果,C型慢性肝炎のペグインターフェロン (Pegylated Interferon : PEG-IFN)・リバビリン (Ribavirin : RBV)併用療法により,持続的ウイルス陰性化(Sustained virological response:SVR)が得られた症例では,治療終了 4 年後までの検討で,年次的にFibroScan値が改善した。 B型慢性肝炎も同様に,核酸アナログ治療により経時的なFibroScan値の改善が得られたが,治療効果は 3 年に留まり,HBVによる肝組織炎症の持続を反映していると考えられた。 その他,FibroScanは肝線維化の代替指標に留まらず,肝発癌の高危険度群の囲い込みにも有効であることが報告されている。また,急性肝炎等により肝細胞の炎症が高度になると,肝細胞の膨化・変性(ballooning)により,高い測定値が得られる傾向にあるため,病態に応じた測定値の解釈が必要である。 FibroScanは,有腹水・肥満患者では測定困難であるが,非侵襲で繰り返し測定出来る点が最も大きな利点であり,治療開始前の評価のみならず,治療後の経過や予後,発癌の予測にも有効であり,総合診療医が慢性肝疾患を管理する上で非常に有用であると考えられる。
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© 2012 日本病院総合診療医学会
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