2010 年 11 巻 2 号 p. 93-99
急性期病院においてチューブ類の自己・事故抜去は医療事故の多くを占める。中でも気管チューブの自己抜去は、患者に不要な苦痛を与えるだけでなく、低酸素脳症等を引き起こせば入院期間の延長や、患者の生命を危険にさらす場合もある。本研究では、気管チューブの自己抜去のリスクファクターを探るべく、文献研究を行った。
医学文献データベースを用いた文献検索の後、関連する61件の論文のレビューを行った結果、信頼性が高いと考えられる比較対照群のある観察研究が18件(コホート研究8件、ケースコントロール研究10件)得られた。これらの研究から、尿素窒素(BUN)異常、不穏・興奮、ウィーニング中、院内感染症が気管チューブの自己抜去のリスクファクターであると分かった。自己抜去のリスク評価票については、検証され実用化されているものは見出せなかった。
今後は、より信頼性の高い研究デザインによるリスクファクターの同定、リスク評価票の開発が、自己抜去の効果的な予防に必要であると考える。