日本医療マネジメント学会雑誌
Online ISSN : 1884-6807
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11 巻, 2 号
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総説
  • 秦 温信
    2010 年 11 巻 2 号 p. 80-92
    発行日: 2010/09/01
    公開日: 2018/10/17
    ジャーナル フリー

     DPC環境下においても医療の質と病院経営の安定をいかに維持して行くかがますます病院に求められてきている。われわれは全社連定点観測システムのデータを用いたベンチマーク分析によりDPCの評価について共同研究を行ってきた。その結果、DPCデータから得られる原価計算や臨床指標のベンチマーク分析によって標準的治療計画すなわち標準的クリティカルパスの立案が可能と考えられた。また、これらの検討からもたらされるデータの蓄積によってDPCのシステムとしての評価も可能と考えられた。

  • 藤田 茂, 瀬戸 加奈子, 松本 邦愛, 城川 美佳, 北澤 健文, 長谷川 友紀
    2010 年 11 巻 2 号 p. 93-99
    発行日: 2010/09/01
    公開日: 2018/10/17
    ジャーナル フリー

     急性期病院においてチューブ類の自己・事故抜去は医療事故の多くを占める。中でも気管チューブの自己抜去は、患者に不要な苦痛を与えるだけでなく、低酸素脳症等を引き起こせば入院期間の延長や、患者の生命を危険にさらす場合もある。本研究では、気管チューブの自己抜去のリスクファクターを探るべく、文献研究を行った。

     医学文献データベースを用いた文献検索の後、関連する61件の論文のレビューを行った結果、信頼性が高いと考えられる比較対照群のある観察研究が18件(コホート研究8件、ケースコントロール研究10件)得られた。これらの研究から、尿素窒素(BUN)異常、不穏・興奮、ウィーニング中、院内感染症が気管チューブの自己抜去のリスクファクターであると分かった。自己抜去のリスク評価票については、検証され実用化されているものは見出せなかった。

     今後は、より信頼性の高い研究デザインによるリスクファクターの同定、リスク評価票の開発が、自己抜去の効果的な予防に必要であると考える。

事例報告
  • —急性骨髄性白血病についての事例報告—
    木村 優子, 小松 恒彦
    2010 年 11 巻 2 号 p. 100-105
    発行日: 2010/09/01
    公開日: 2018/10/17
    ジャーナル フリー

     クリティカルパスに求められていることは、医療の質向上のみならず、医師の業務量削減や診断群分類(Diagnosis Procedure Combination、以下DPC)におけるコスト管理に役立つことである。従来われわれが使用してきたエクセル(マイクロソフト社)ベースで作成されたDPC対応血液がん化学療法クリティカルパスの手法を、電子カルテ(富士通 EGMAIN-GX)のクリティカルパス機能とレジメン機能を用い、DPC 対応全オーダー連動型電子クリティカルパスとレジメンに変換し運用した。医師のオーダー入力に要する時間は大幅に短縮され、誤投与のリスクも極めて小さくなると推測される。また、予めDPC収入に対する薬剤費と検査費をクリティカルパスとレジメンを用いて計算した後に承認することで、DPC 診療報酬に対する薬剤費割合の算出が容易となった。この方式を用いることは医療者の業務量削減と医療の質向上に有用と思われた。

  • 山部 祐子, 髙木 麻里, 岩田 一恵, 米井 敏郎
    2010 年 11 巻 2 号 p. 106-113
    発行日: 2010/09/01
    公開日: 2018/10/17
    ジャーナル フリー

     IDSA(Infectious Diseases Society of America、米国感染症学会)/ ATS(American Thoracic Society、米国胸部疾患学会)およびJRS(Japanese Respiratory Society、日本呼吸器学会)の成人市中肺炎ガイドラインに準拠して新たに作成したクリティカルパスを用いて、至適な入院期間を設定することを目的とし、いわゆるバリアンス分析を行った。このクリティカルパスの治療スケジュールは以下の通りである。初回治療としてβ-ラクタム注射剤と経口のマクロライド系抗生剤との併用を3日間行い、有効である場合は第7病日まで継続し、無効である場合はβ-ラクタム剤をキノロン注射剤に変更し、第10病日まで治療を継続する。2006年12月から2008年4月までに、18名の患者にこのクリティカルパスを使用した。便宜上、入院期間が10日間を越えた場合を負のバリアンスありとした。入院時のCRPと白血球数、第3病日のCRP、白血球数の減少率について解析した結果、第3病日の白血球数の減少率が低値を示すことが、入院期間延長の重要な要因と考えられた。

  • —転倒予防チェックリスト作成のために—
    宮越 浩一, 高橋 静子, 古田 康之, 夏目 隆史
    2010 年 11 巻 2 号 p. 114-118
    発行日: 2010/09/01
    公開日: 2018/10/17
    ジャーナル フリー

     医療機関においては転倒事故に対する十分な対策が求められる。今回われわれは簡便な転倒対策を構築する目的で、入院初期に得られる複数の所見より転倒転落を予測する因子の抽出を試みたので報告する。

     2008年11月より3ヶ月間の間に当院に入院した連続症例を対象とした。転倒転落を予測する因子として17項目からなるチェックリストを看護師により入院初期(24時間以内)に評価した。本チェックリストは年齢、3項目の身体機能、5項目の精神機能、3項目の複合要因、5項目のその他の因子より構成されている。このチェックリストは当院の既存のチェックリストに、先行研究で指摘されているいくつかの転倒予測因子を追加することにより作成した当院独自のものである。

     対象となったのは2,258例であり、このうち転倒転落に至ったのは55例であった。ロジスティック回帰分析による多変量解析を行った。ここでは転倒転落の既往がある、座位バランス不良、ふらつきがある、貧血、介助が必要にも関わらず一人で動こうとする、の5項目が抽出された。Receiver Operating Characteristic曲線では、曲線下面積が0.776となっていた。予測精度は感度0.709、特異度0.799であり、入院初期に得られる情報のみからある程度のスクリーニングが可能であった。今後さらに簡便かつ精度の高い転倒予測手法の構築を進めたいと考える。

  • 瀧川 洋史, 佐々木 富貴子, 日野 理彦
    2010 年 11 巻 2 号 p. 119-125
    発行日: 2010/09/01
    公開日: 2018/10/17
    ジャーナル フリー

     医療情勢の変遷に伴い、病院完結型医療から地域完結型医療へと移行しつつある。また、Nutrition Support Team(以下NST)の普及によって栄養療法が見直され、栄養管理の継続も地域医療連携のひとつとなっている。国立病院機構浜田医療センターでは、地域医療連携室が設置されるとともに、NST が稼動している。地域医療連携の充実を目的に近隣施設を対象にアンケートを実施したところ栄養療法への関心が高く、栄養に関する詳細な情報提供が求められていることが明らかとなった。また、栄養管理に関するシステムは未整備であり、栄養評価、嚥下障害評価、食事介助、経腸栄養における注意点に関する調査では、施設・職種間によって重視している項目が異なった。それは職種の相違だけではなく、各施設の特性、施設を利用している患者層の相違にもよると推測された。地域医療施設のニーズに応え、医療連携の充実を図る為に栄養に関する情報提供書の添付、問い合わせ窓口の整備、地域研修会の開催などを試みている。地域連携の充実には、相互の現状・ニーズを把握しながらの双方向性の関係構築が重要であると考えられた。

  • 山本 英彦, 久川 広則, 上平 繁治, 姫野 委美, 安永 佳代子, 福村 文雄
    2010 年 11 巻 2 号 p. 126-129
    発行日: 2010/09/01
    公開日: 2018/10/17
    ジャーナル フリー

     がん診療を受ける際の治療費は高額であるため、患者相談室で治療費についての相談を受ける機会も多い。現在の医療制度では多くのがん診療を行っている病院でDPC(Diagnosis Procedure Combination)包括支払制度が採用されており、同じ疾患で同じ治療を受ければ基本的に全国どこでも治療費は比較的均一となっている。今回われわれは、過去に当院でDPC包括請求を行ったがん入院患者のデータを抽出し、治療内容別に出来高項目の入院日数毎の平均を算出したものを基本として、がんの種類・治療内容・入院日数別での患者の支払う入院治療費の概算を算出した。そしてこれらのデータを独自に開発したシステムに載せることで、「がん治療費概算照会システム」を作成した。このシステムを利用すれば、がんの発生臓器と治療法(手術、放射線、 化学療法)、入院日数を順次クリックしていくことで瞬時に治療費の概算が表示される。これを使うことで、院内の医療スタッフは患者側の要求に応じて、病院内のパソコンで治療費の概算を瞬時に検索することができるようになり、また外部の人でも当院のホームページにアクセスすることでがん治療費の概算を照会できるようになった。本システムは、医療者と受療者双方のがん診療に係わる人たちに有用な情報を提供できたものと考える。

  • 田隝 博樹, 上島 健太郎, 三浦 遼子, 井上 忠夫
    2010 年 11 巻 2 号 p. 130-133
    発行日: 2010/09/01
    公開日: 2018/10/17
    ジャーナル フリー

     国際医療福祉大学三田病院では注射オーダリングシステムが稼働しておらず、注射せん監査、薬歴管理、輸液ラベル発行などの業務はすべて薬剤師の手により行わなければならない。がん化学療法注射せんは手書きの処方せんで運用している。このため、記載漏れや誤記載、投与量などの疑義を抱えた処方せんが薬剤部に提出されていることが少なくない。今回、2008年10月〜2009年3月の6ヶ月間に、がん化学療法注射せんにおいて行った疑義照会を内容と重要性について次のごとく分類した。内容分類は①投与量、②投与間隔、③投与時間、④レジメン、⑤支持療法、⑥重複処方、⑦その他の7分類とした。重要性分類は危険度に応じて A 、Bの2分類とし、A>Bの順に危険度が高いとした。

     対象期間内に薬剤部へ2,390枚のがん化学療法注射せんが提出されていた。 そのうちの173枚 (7.2%) で疑義照会が行われ、 110枚 (4.6%) が処方変更となっていた。 疑義照会は①投与量62枚、 ②投与間隔13枚、 ③投与時間21枚、 ④レジメン34枚、 ⑤支持療法32枚、 ⑥重複処方 6 枚、 ⑦その他 5 枚であった。 重要性分類は A 55枚、 B 118枚であった。

     細心の注意を払い処方を行う必要のあるがん化学療法注射せんでも7.2%にも上る疑義照会が行われ、 4.6%が処方変更となっていた。 抗がん剤の過量投与につながる恐れのある処方は特に重要なものであり、 薬剤師による処方監査・疑義照会の必要性が再確認された。

  • 大重 育美
    2010 年 11 巻 2 号 p. 134-138
    発行日: 2010/09/01
    公開日: 2018/10/17
    ジャーナル フリー

     2000年に厚生労働省による「健康日本21(21世紀における国民健康づくり運動)」が始められ、生活習慣病の一次予防・二次予防の施策が進められてきた。しかし、中間報告では糖尿病有病者・予備軍の増加、肥満者の増加(20歳〜60歳男性)や野菜摂取量不足など目標値に届かず、一部の指標では悪化していることが明らかになった。生活習慣病に対する食習慣の影響も大きいことも周知で、特に食行動の異常として、外的な環境に影響を受けやすく食事も早食いや荒嚼みが多く生活のリズムの乱れで朝食を摂らずに夜間遅い時間に摂る人などが肥満者に多いことが特徴とされている。このように、生活パターンの乱れに伴う食習慣による影響が考えられる職業として、夜勤のある看護職に焦点を当てた。そこで、夜勤という勤務体系が、普段の食習慣、運動習慣、飲酒習慣、身体状況にあたえる影響について年代別に実態調査を行った。夜勤による影響は食習慣にみられ、年代別では20歳代および50歳代に顕著であった。

紹介
  • 稲葉 正敏, 太田 和子, 垣内 祥宏
    2010 年 11 巻 2 号 p. 139-143
    発行日: 2010/09/01
    公開日: 2018/10/17
    ジャーナル フリー

     内服薬に関する投薬エラー発生防止を目的に、病棟に担当薬剤師を配置し、内服薬の新しい管理方法を看護師と共に立案・試行した。新管理方法の導入により、誤投薬、過量投与、配薬忘れの回避などが認められ、内服薬に関する投薬エラー発生件数を約4分の1に減少させることができた。看護師に対するアンケート調査から、「配薬業務にかかる時間が減少し、他業務に専念できるようになった」、「配薬業務に対する意識が高まった」など新管理方法を支持する回答が得られた。

     病棟での薬剤師による内服薬の新管理方法は、投薬の安全性向上だけでなく、看護業務の効率化、患者サービスの向上にも貢献できると考えられた。

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