日本医療マネジメント学会雑誌
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事例報告
腹部大動脈瘤に対する開腹手術とステントグラフト内挿術の保険請求における差異
曽川 正和福田 卓也田山 雅雄犬井 真奈美諸 久永
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2011 年 12 巻 1 号 p. 30-34

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抄録

 腹部大動脈瘤のステントグラフト治療は、従来の手術と異なり開腹をしないため体への負担が少なく、このため高齢者を中心に急激に症例数が増加している。ステントグラフト内挿術を医療コストの視点から検討した。

 2007年12月から2009年1月までに腹部大動脈瘤に対するステントグラフト内挿術を施行した14例につき検討した。また、対象群として、ほぼ同時期の開腹手術15例との比較も行った。企業製ステントグラフトのZenith®は5例、他社のステントグラフトであるExcluder®は済生会新潟第二病院では、遅れて使用を開始したが9例に使用した。

 診療報酬点数は開腹手術が208,559±26,600点に対し、ステントグラフト内挿術では、318,860±46,401点であり、ステントグラフト内挿術が開腹手術より点数が上がる理由は、材料収益にあり、開腹手術での人工血管等の保険診療点数が25,133点に対し、ステントグラフトでは、185,350点であった。ステントグラフト内挿術は、手術翌日より歩行、食事を開始でき、その後の診療報酬点数が低いのが特徴的であった。入院日数は、中央値で14日となっているが、術前・術後の看護はほとんど必要なく、病院スタッフに対する負担も定量化はしていないが軽減できている。さらに、年間の腹部大動脈瘤手術件数もステントグラフト内挿術を開始する前の1.9倍(2006年と2008年の比較)に増加しており、各症例での収益増加よりも、 症例数増加に伴う収益の増加が期待できる。

 ステントグラフトの導入により、術前・術後の患者の負担が軽減されたのみならず、医療スタッフへの負担軽減が認められた。また、ステントグラフト導入により腹部大動脈瘤手術症例も増加した。

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