日本医療マネジメント学会雑誌
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12 巻 , 1 号
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事例報告
  • −標準化に向けたベストプラクティスモデルの立案−
    羽隅 透, 齋藤 泰紀, 齋藤 俊博, 菊地 秀
    2011 年 12 巻 1 号 p. 2-7
    発行日: 2011/05/01
    公開日: 2020/04/13
    ジャーナル フリー

     肺がん肺葉切除クリティカルパス(以下肺がんパス)の行程内容に関する国立病院機構(以下 NHO)施設間の差異、ばらつきを検討し、現状における肺がんパスのベストプラクティスモデルの立案を試みた。

     全国NHO施設にて運用されている肺がんパスを対象とし、記載内容を比較検討した。検討項目は全体設定として適応基準、達成目標、退院基準、入院日数とし、周術期処置法として術前呼吸訓練、術前処置、肺塞栓症予防対策、抗菌薬使用法、硬膜外チューブ管理、心電図管理、酸素投与、尿道カテーテル管理、胸腔ドレーン管理、離床、輸液、食事、創部処置法、術後吸入、術後リハビリテーション、検査スケジュール等とした。

     36施設での肺がんパスが検討可能であった。全体設定において適応基準、退院基準を明記していない施設が多数を占めた。周術期処置において一定の傾向を示す項目もあったが、施設間での差異、ばらつきは存在した。ガイドラインの勧告と乖離した投薬・処置法も行われていた。アンケート結果や最新のガイドライン、Diagnosis Procedure Combination(DPC)設定等に基づき、推奨されうるクリティカルパスを立案した。

     今回立案したベストプラクティスモデルが真のベストモデルになり得るか否かは、施設間でのバリアンスの発生頻度、患者満足度などにより検証する必要がある。

  • 井口 厚司
    2011 年 12 巻 1 号 p. 8-13
    発行日: 2011/05/01
    公開日: 2020/04/13
    ジャーナル フリー

     地域連携クリティカルパスを用いて診療連携を行っている前立腺がん、およびその疑いの患者を対象に、連携先が泌尿器科専門医である場合と非専門医である場合とでがんの診断能力、および連携を受け入れている患者の心理に違いがないか検討した。

     2007年11月から2009年2月までの期間に地域連携クリティカルパスを用いた147名のうち、77名は泌尿器科医と、70名は非泌尿器科医と連携していた。地域連携クリティカルパス導入後2010年2月までに国立病院機構九州医療センター泌尿器科を再受診した患者は、それぞれ10名(13.0%)、14名(20.0%)であった。専門医からの再受診の理由はPSA(Prostate Specific Antigen)上昇が10名中8名(10.4%)で、うち6名が生化学的再発、1名が前立腺がんと診断された。一方、非専門医からの再診理由は14名中PSA上昇が12名(17.1%)で、5名が再発、2名が前立腺がんと診断された。経過観察ができている専門医受診患者64名、非専門医受診患者54名では良好な経過が得られており、両者の間で前立腺がんの診断能力に差はみられなかった。

     また、同時に行った60名から得られた患者アンケート調査では、診療連携を受けている患者の心理には連携先の専門性による大きな違いはみられなかった。たとえ連携医が専門医でなくても、地域連携クリティカルパスの達成目標をわかりやすく設定することにより円滑な診療連携が可能になると思われる。

  • 中村 隆志, 古川 佳英子, 杉本 徹
    2011 年 12 巻 1 号 p. 14-18
    発行日: 2011/05/01
    公開日: 2020/04/13
    ジャーナル フリー

     医療情勢の変化の中で医師の診察外業務が増加しているが、本来の診察業務に専念できる環境を整えることは医療の質向上のためにも必要不可欠である。済生会滋賀県病院では診察外業務負担軽減策として2009年4月より医師支援室を開設し、院内で医師事務作業補助者(以下、医療クラーク)8名を育成したので、その効果を報告する。

     主な文書業務の月平均件数は、診断書作成1,068件、退院時要約の基礎データ入力1,711件で、診断書類数上位3科の医師1人あたりの残業時間は8.3時間/月短縮した。チーム医療と生涯教育の支援業務は、カンファレンス支援10件/月、学会発表等のための臨床指標の算出5.5件/月、院内研修会や患者教室開催支援2.5件/月および医局会の運営支援を行った。利用した医師を対象に満足度調査を実施し、役立っていると回答した割合は、文書作成82%、退院時要約入力64%、学会等の資料作成支援91%、研修会開催支援84%であった。

     医療クラークの配置による医師の負担軽減により、医師の自己研鑽の充実が可能となる。また臨床指標の統計出力などの支援により医療の質向上にも貢献できる。 さらに、文書作成以外の質向上業務に従事することで、医療クラークのモチベーション維持やキャリアアップも期待される。

  • 伊藤 眞奈美, 田中 滋己, 山本 初実
    2011 年 12 巻 1 号 p. 19-24
    発行日: 2011/05/01
    公開日: 2020/04/13
    ジャーナル フリー

     医療安全活動では、現状を把握することによって施設の問題点や課題を明らかにしながら、適切な対策を立て実行していく必要がある。今回われわれは、医療安全活動の浸透度や組織の活動状態・問題点を評価できるヒューマンエラー・マネジメントセルフチェックシート(HEMシート)を用いて全職員の医療安全に対する知識や活動を評価した。HEMシートは基本概念、雰囲気、チェック体制、事故調査、再発防止、予防体制、戦略性の7つの医療安全に関する知識や活動内容に対する質問で構成されている。2回の調査対象人数は2006年が521名(有効回答数406名:回答率77.9%)で、2007年は579名(有効回答数496名:回答率85.7%)であった。

     2006年と2007年における7つの分析指標の達成度はすべての指標で改善が認められた。職業別に比較すると事務職の医療安全への関心・知識の浸透が他職種を下回った。一方、低意識者層の割合は、2007年にはいずれの指標においても減少し、医療安全活動の一定の成果を示す結果であると思われた。しかし、事務職の率は他職種より高く、医療安全活動の再教育が必要であることが分かった。

     HEM シートを用いた検討で、組織の医療安全活動に対する認識と理解の程度、医療安全対策の枠組みの整備状況など課題が明確になった。

  • 茂木 学, 松村 成宗, 山田 智広, 武藤 伸洋, 金丸 直義, 下倉 健一朗, 阿部 匡伸, 森田 佳子, 葛西 圭子
    2011 年 12 巻 1 号 p. 25-29
    発行日: 2011/05/01
    公開日: 2020/04/13
    ジャーナル フリー

     入院患者がベッドから転倒転落する事故は件数が多いもののひとつであり、予防方法の確立が強く望まれている。実際、患者へのアセスメントやベッドセンサ等の対策を講じているにも関わらず、特に夜間、高齢者でインシデントが多く発生している。そこで、転倒転落事故を予防するために、NTT サイバーソリューション研究所と東京都内の病院が協力して研究を行った。第一報では、夜間における患者の起き上がり動作分析を行いその結果を報告した。

     本稿では、ベッドサイドでの転倒転落事故予防を目的とした「転倒転落予防ベッドシステム(みまもりベッド)」を構築したので、その概要と調査結果を報告する。本システムは離床の予兆を検知するとナースコールを発呼すると共に、音声で患者に働きかけ離床を遅らせるよう動作する。調査は1名の患者に対し5日間行った。この期間において本システムが自動的に発呼したナースコールは41回確認された。センサデータの分析と看護師へのヒアリングから、看護師への誤反応が多い等の課題はあるものの、反応タイミング・検知精度共に調査を行った範囲では十分な結果が得られた。

  • 曽川 正和, 福田 卓也, 田山 雅雄, 犬井 真奈美, 諸 久永
    2011 年 12 巻 1 号 p. 30-34
    発行日: 2011/05/01
    公開日: 2020/04/13
    ジャーナル フリー

     腹部大動脈瘤のステントグラフト治療は、従来の手術と異なり開腹をしないため体への負担が少なく、このため高齢者を中心に急激に症例数が増加している。ステントグラフト内挿術を医療コストの視点から検討した。

     2007年12月から2009年1月までに腹部大動脈瘤に対するステントグラフト内挿術を施行した14例につき検討した。また、対象群として、ほぼ同時期の開腹手術15例との比較も行った。企業製ステントグラフトのZenith®は5例、他社のステントグラフトであるExcluder®は済生会新潟第二病院では、遅れて使用を開始したが9例に使用した。

     診療報酬点数は開腹手術が208,559±26,600点に対し、ステントグラフト内挿術では、318,860±46,401点であり、ステントグラフト内挿術が開腹手術より点数が上がる理由は、材料収益にあり、開腹手術での人工血管等の保険診療点数が25,133点に対し、ステントグラフトでは、185,350点であった。ステントグラフト内挿術は、手術翌日より歩行、食事を開始でき、その後の診療報酬点数が低いのが特徴的であった。入院日数は、中央値で14日となっているが、術前・術後の看護はほとんど必要なく、病院スタッフに対する負担も定量化はしていないが軽減できている。さらに、年間の腹部大動脈瘤手術件数もステントグラフト内挿術を開始する前の1.9倍(2006年と2008年の比較)に増加しており、各症例での収益増加よりも、 症例数増加に伴う収益の増加が期待できる。

     ステントグラフトの導入により、術前・術後の患者の負担が軽減されたのみならず、医療スタッフへの負担軽減が認められた。また、ステントグラフト導入により腹部大動脈瘤手術症例も増加した。

  • −「医療の質と経営の質の両立によるコスト削減」−
    藤井 進, 高崎 光浩, 佛淵 孝夫
    2011 年 12 巻 1 号 p. 35-45
    発行日: 2011/05/01
    公開日: 2020/04/13
    ジャーナル フリー

     大学病院においては診療科毎の損益分岐点が把握しづらく、人や病床などの医療資源の最適な配置が困難な状態にある。質の高い医療を提供する為にも経営基盤の安定化は必要で、医療資源が診療科毎で効率的に活用されているかわかる管理会計が求められた。そこで各診療科を専門病院とし、その集合体として管理する『テナント式管理』と、部門間に依存関係があるサービスに、収入とコストの関係を用いる『院内取引制度』という概念を利用したシステムを構築した。算出した指標を基に入院医業収益を採算部門と非採算部門で個々に評価した。

     利用データはDPC、人件費、薬剤・材料購入費、減価償却費、管理費とした。損益分析の結果、採算部門は11/27部門、非採算部門は5/5部門が適正であった。日別収支の推移から損益モデルを(1)ホスピタルフィー依存型、(2)ドクターフィー依存型、(3)全日でマイナスになる不採算型、(4)初期医療密度が高く後半に損益が向上するリカバリ型、(5)その他の5型に分類できた。

     損益が伴わない在院日数の長期化による病床稼働率の向上は、増収減益であると可視化された。経営的に有効な在院日数にする為には、病床数の最適化、医療の標準化、患者にその入院期間を納得させる満足度の向上、地域連携が必要で、「社会、医療機関、患者に効率的で質の高い医療の提供」が最も低コストであり、医療の質と経営の質は両立されると示唆された。

紹介
  • 木村 充, 柴田 裕次, 柳澤 高道, 田口 潤智, 西畑 光人
    2011 年 12 巻 1 号 p. 46-51
    発行日: 2011/05/01
    公開日: 2020/04/13
    ジャーナル フリー

     兵庫県では、神戸、阪神南、阪神北、東播磨、西播磨、北播磨、丹波篠山、但馬、淡路の各二次医療圏でそれぞれの脳卒中の地域連携クリティカルパスが開発・運用されている。今回、北播磨、三田と丹波篠山、阪神南、阪神北の各地域で協力し、広域で利用できるエクセルベースの脳卒中地域連携クリティカルパスを開発した。このクリティカルパスは急性期病院でも回復期病院でも医師、看護師、リハビリテーションスタッフそれぞれが、患者データを入力すれば、クリティカルパスが完成し、それと同時に診療情報提供書や看護サマリー、リハビリテーションサマリーも完成する。患者の状態が変化したときにその時点の最新のデータを入力しておけば、必要な時に紙で出力することにより、中間時点での紹介状や各サマリーも作成できる。電子カルテ化している病院の場合は、データをカルテから取り込むこともできる。患者基本情報などは、すでに急性期の病院で記入されているので、回復期と維持期の施設では記入する必要はない。セキュリティーが確保できれば、クリティカルパスをインターネットや電子メールで送ることも可能である。今までよりも業務量を増やすことのない地域連携クリティカルパスを作成することができた。

  • 恩地 隆, 上崎 真一, 松原 広, 佐々木 基陽, 田邉 ひとみ, 原 弘道
    2011 年 12 巻 1 号 p. 52-56
    発行日: 2011/05/01
    公開日: 2020/04/13
    ジャーナル フリー

     看護師がシリンジポンプを操作する際に、どのような操作に不安を感じているのかを調査した。それらを取り除く目的で122名の看護師に対して、1講習4名の少人数グループ実習を行った。グループ実習の効果は実習前後にアンケートを実施して評価した。実習前では流量設定の方法、シリンジセットの方法、プレフィルドシリンジの設定などの操作に不安を感じている看護師が多くいた。また、押し子が外れ落差により薬剤の大量注入が起こるサイフォニング現象や薬剤の一時的な過大注入が起こるボーラス注入についての認識度が低かった。看護師業務の経験年数別では、プレフィルドシリンジ設定の操作に多くのベテラン看護師が不安を感じていた。病棟別の比較では、外科病棟の看護師は他病棟の看護師に比べ操作に不安を感じる者が少なかった。少人数グループ実習後のアンケートでは全ての操作において不安は有意に減った。またサイフォニング現象、ボーラス注入の認識度についても実習後で有意に上がった。

     今回の少人数グループ実習は、操作に対する不安を取り除き専門的な知識革新に有効であったと考えられる。

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