日本医療マネジメント学会雑誌
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事例報告
事故当事者が直面した体験からみたサポートのあり方についての研究
児玉 由美子村田 尚恵猪狩 圭介木下 美佐子田中 由利子矢野 いづみ松本 洋美
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2012 年 12 巻 4 号 p. 229-235

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抄録

 本研究は事故当事者の主観的体験から、事故後の当事者及び関係者へのサポートのあり方を検討することを目的とする。実際に影響レベル3b以上の事故に関与した当事者を対象に、公的医療機関に研究協力を依頼し、 回答が得られた43施設45名を対象とした。データは、記述式調査用紙で収集し、「事故後の周囲の対応についての当事者の思い」に関する記述内容を質的に分析した。

 分析の結果、事故後の対応についての当事者の思いは、≪その場の業務調整により乗り越えられた安堵≫ ≪気持ちにつきあってもらい楽になる≫ ≪ “あなただけの責任ではない” に救われる≫ ≪他者との省察により前向きになる≫ ≪繰り返される事実確認に対して負担感≫ ≪振り返りの場で沸き起こる後悔≫ ≪対応を一人で背負わされる困惑≫ ≪状況を知らされない不安≫ ≪二次的に波及する当事者間の軋轢への嫌悪≫ の9のカテゴリーが抽出された。これらにより、組織としての事故対応の方向性を明確にし、当事者が起こった事実と向かいあえるようなサポート体制や周囲の関係者も含めた支援の必要性と平素からの職場内コミュニケーションを高め、協力し合える職場風土を作り上げていくことの重要性が示唆された。

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© 2012 特定非営利活動法人 日本医療マネジメント学会
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