転倒・転落事故での傷害が重症化する危険因子を調査するため、事例を結果の影響度(重症度)別に分類し、事故発生日以前の看護記録からテキストマイニングにより抽出した単語の頻度を比較し、影響度に関連の強いキーワードについて検討した。対象は、2013年に報告された転倒・転落事例全462例で、実害のなかった例、経過観察を要した例、軽度の治療を要した例、そして濃厚な治療を要した例の4群に分類した。解析は、統計解析環境“R”上で形態素解析エンジン“MeCab”を利用する“RMeCab”パッケージを用いて行った。その結果、転倒・転落事故による傷害で重症となる患者では、事前の看護記録において排泄と活動性に関する記述が多くみられており、危険因子として排泄に関する問題を抱えていることや活動性の低下の関与が推測された。一方、痛みや発熱などの症状や車椅子に関する記述は重症例では逆に少なく、防御意識が危険行動を回避させている可能性が考えられた。今回の成績は、転倒・転落事故での重症例を減少させる対策への一つの手がかりになると考えられる。