日本医療マネジメント学会雑誌
Online ISSN : 1884-6807
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15 巻, 4 号
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原著
  • 田中 博子
    原稿種別: 原著
    2015 年15 巻4 号 p. 223-228
    発行日: 2015/03/01
    公開日: 2021/08/25
    ジャーナル フリー

     在宅療養継続に関する患者・家族の意思決定に対する在宅医の支援を明らかにすることを目的に、半構造的インタビューを用いた質的記述的研究を行った。結果、患者・家族の意思決定に関する支援、患者・家族が選択した療養生活の支援の2つに分類された。意思決定の支援において、【在宅療養に対する意思確認】は、在宅療養が開始される時、長期の介護継続が必要になる時、看取りが現実的になる時を最も重要な時期と捉えていた。意思決定の内容は、【主体的な意思決定の尊重】、【在宅療養を選択した患者の希望に添う】、【患者・家族の変化を捉え支え続ける】であった。在宅療養を支える関わりは、【家族の介護継続への支援】、【在宅療養継続の危機への対応】を行い、 看取りにおいては、 患者の変化していく状況をありのままに受け止められるように働きかけ、【在宅で看取る家族を支える】ことを大切にしていた。24時間の支援・緊急時の対応は、訪問看護師との連携、病院との情報共有と連携を図り、【バックアップ体制】を構築し、患者・家族が不安にならないよう、早急な対応を行うことを心がけていた。在宅医は、【在宅医療の目的・意義】を、患者が家族とともに満足な生活を送られることに加え、家族に囲まれ、その人らしく自然な最期が迎えられるよう支えていくと捉えており、このような関わりは、患者・家族の安寧な暮らしの保証であることが示唆された。

  • 岡本 康幸, 田中 麻理
    原稿種別: 原著
    2015 年15 巻4 号 p. 229-232
    発行日: 2015/03/01
    公開日: 2021/08/25
    ジャーナル フリー

     転倒・転落事故での傷害が重症化する危険因子を調査するため、事例を結果の影響度(重症度)別に分類し、事故発生日以前の看護記録からテキストマイニングにより抽出した単語の頻度を比較し、影響度に関連の強いキーワードについて検討した。対象は、2013年に報告された転倒・転落事例全462例で、実害のなかった例、経過観察を要した例、軽度の治療を要した例、そして濃厚な治療を要した例の4群に分類した。解析は、統計解析環境“R”上で形態素解析エンジン“MeCab”を利用する“RMeCab”パッケージを用いて行った。その結果、転倒・転落事故による傷害で重症となる患者では、事前の看護記録において排泄と活動性に関する記述が多くみられており、危険因子として排泄に関する問題を抱えていることや活動性の低下の関与が推測された。一方、痛みや発熱などの症状や車椅子に関する記述は重症例では逆に少なく、防御意識が危険行動を回避させている可能性が考えられた。今回の成績は、転倒・転落事故での重症例を減少させる対策への一つの手がかりになると考えられる。

  • 品川 佳満, 橋本 勇人
    原稿種別: 原著
    2015 年15 巻4 号 p. 233-241
    発行日: 2015/03/01
    公開日: 2021/08/25
    ジャーナル フリー

     本研究では、患者の個人情報取扱い事故発覚から公表に至るまでに要した日数および公表までに長時間を要した要因(以下、本研究では正当な理由がある場合も含めて「遅れ」と表記)を分析することにより、医療機関が適正な対応や公表を行うための基本的態度・姿勢を提案することを目的とした。

     2008年〜2012年に新聞やWebサイト等で公表された患者の個人情報取扱い事故249件を分析対象とし、公表に至るまでの日数の統計学的な特徴を確認した。また、公表遅れにつながった要因を統計学的な分析および事例分析から探った。

     その結果、半数が1週間以内、4分の3が2週間以内に事故を公表していたが、1割の事故は、公表までに25日以上要していたことが明らかになった。公表遅れの主な要因は、被害の拡大防止策の実施など「合理的な理由」に由来するもの、事故を起こした者の報告遅れといった「不合理な理由」に由来するもの、対応・対策の協議といった「どちらにもなりうる理由」に大別された。

     合理的な理由に基づくものであれば、公表までに時間を要しても適正な対応といえる。しかし、不合理な理由に基づく対応遅れは避けなければならない。医療機関は、被害の拡大防止のための緊急対応と、慎重かつ正確な対応を組み合わせながら、できるだけ速やかに行動していく必要がある。いずれにせよ、患者を含む利害関係者がその妥当性を検証できるように事故の経緯を積極的に公表していくことが重要である。

事例報告
  • 飯嶋 久志, 大澄 朋香
    原稿種別: 事例報告
    2015 年15 巻4 号 p. 242-246
    発行日: 2015/03/01
    公開日: 2021/08/25
    ジャーナル フリー

     複数医療機関を受診する患者情報管理では、情報の一元化が求められる。そこで、地域医療における情報共有媒体として、お薬手帳の活用を検討した。情報共有は新たに連携フォーマットを作成し、手帳に組み込むこととした。

     連携フォーマットは医療関係団体で協議し、さらに医療従事者の意見を反映した。フォーマットは医療現場で機能するか否か確認するため、患者と医療従事者を対象に半構造化インタビューを行い、有用性や問題点などを抽出した。

     医療関係団体による協議で提示された記述式とチェック式のフォーマットに対して、利用者のインタビュー結果を評価したところ、発話データからは69件が抽出され、「有効活用」31.9%、「阻害要因」8.7%、「課題」23.2%、「有用情報」36.2%の4領域に分類することができた。作成したフォーマットは患者や医療従事者間の連携や健康管理に活用され、今後更に広く利用されることが期待できた。しかし、解読困難な文字への対応や記載方法の習得などの改善も必要であることが明らかとなった。

     これらを踏まえてチェック欄と記載欄を別項にし、さらに残薬に関する項を追加するなどフォーマットを修正した。本調査で作成したフォーマットはお薬手帳に組み込み、2012年6月に市販した。今後、この手帳が医療連携に活用され、地域医療の質向上につながることが望まれる。

  • マインドマップ手法の応用
    高橋 弘明, 相馬 淳, 望月 泉
    原稿種別: 事例報告
    2015 年15 巻4 号 p. 247-250
    発行日: 2015/03/01
    公開日: 2021/08/25
    ジャーナル フリー

     多くの医療分野で多職種連携の重要性や有用性が強調されているが、多職種委員が参加する会議では職域を超えて積極的に討論できる機会は多くない。われわれは多職種代表の全委員が短時間で積極的に意見を出し、討論と意見集約をして今後の新しい取り組みを実施するために、ワークショップ形式の会議運営を開始した。事前に全ての委員に各部署で課題に対する意見を協議して考えておくことを依頼し、会議ではその意見を集約してプロダクトを作成する手法の一つとしてマインドマップを利用した。会議は1ヶ月に1度開催し、運営時間は1時間以内に終了することとした。初回会議で年度活動方針のキーワードをホスピタリティに決定した。その後、毎月の会議でホスピタリティ実現のために行うべき活動を討論した。立案された活動計画は、敷地内ゴミ拾い運動、月例メディエーション研修会の開催、職員あいさつ運動、あいさつ運動に使用するポスターを各部署で作成し、得票を競うポスターコンテストなどである。全委員は、会議ごとに決定された個々の活動目標を院内に広めた。ワークショップ形式の会議は多職種による委員の討論を活発にし、そこで計画された取り組みは積極的に運営・推進できる可能性がある。

  • 川本 俊治, 重松 研二, 河野 由佳, 田村 律, 松田 守弘, 上池 渉
    原稿種別: 事例報告
    2015 年15 巻4 号 p. 251-255
    発行日: 2015/03/01
    公開日: 2021/08/25
    ジャーナル フリー

     今回、我々は電子カルテに入力された様々な情報をデータウェアハウス(以下DWH)経由で活用する退院支援管理システムを構築したので、在院日数に及ぼす効果を明らかにする。

     退院支援管理は1)リスクスクリーニング、2)標準化カンファレンスによる退院支援計画立案、3)計画の進捗管理機能で構成した。退院支援のリスク評価は一次項目と詳細項目に分類して標準化し、電子カルテの患者基本情報に組み込んだ。管理システムはDWHから疾病・身体情報、看護必要度、日常生活自立度、認知症項目を抽出し、責任者が介入症例を選定した。退院計画は現在の課題と対策を多職種カンファレンスで明確化して立案し、さらに管理システムで退院計画の進捗管理を行った。

     在院日数50日超え患者数はシステム導入により大きく減少した。標準化カンファレンスの使用率は導入半年毎に有意に上昇し(それぞれ、8.7%、59.2%、76.3%、p<0.05)、カンファレンスがより早期に開催され(それぞれ、38.4±45.0日、21.0±22.2日、10.0±12.8日、p<0.05)、MSWコンサルトも早期となり(それぞれ、34.8±32.2日、25.9±21.4日、28.0±23.8日、p<0.05)、在院日数も有意に短縮した(それぞれ、67.0±51.2日、45.4±32.7日、39.5±28.2日、p<0.05)。以上から、DWHを活用した退院支援管理システムの活用が退院支援カンファレンスの入院早期実施につながり、長期入院患者の減少につながった。

  • DPCコードと看護必要度の紐付
    真下 綾子, 駒崎 俊剛, 鳥村 祥子, 山元 友子, 村岡 修子
    原稿種別: 事例報告
    2015 年15 巻4 号 p. 256-260
    発行日: 2015/03/01
    公開日: 2021/08/25
    ジャーナル フリー

     本研究の目的は、急性期病院においてDPCコードと看護必要度の紐付を行い、特定の疾患、治療における看護必要度の推移を明確にし、看護職員配置システム構築のための概念モデルを検討することである。500床以上の急性期病院1施設1病棟(外科系)を対象施設とし、入院患者のDPCコード及び看護必要度、また、看護職員のラダーレベルのデータを収集した。データ収集期間は、2010年10月の1ヶ月間とした。患者のICD疾患名及び手術有無のコードごとによる看護必要度を、それぞれA得点及びB得点として平均値を算出し、入院日を0日とした看護必要度得点の経過を検討した。一般的な1疾患(胃の悪性腫瘍)の結果を抽出し、看護必要度A得点及びB得点の推移をグラフ化した。さらに、外科系病棟における1ヶ月間の看護必要度A得点及びB得点の推移と、看護師のラダーレベルと人数を掛け合わせた看護力ポイントの推移を調べて看護力の経過を確認した。

     結果として、患者が手術有の場合、バリアンスを除外して看護必要度の推移を確認することにより、看護ケアニーズの経過をより高い精度で予測できる可能性が示唆された。さらに、病棟の1ヶ月間の看護力は土曜日と日曜日に低くなっているため、急な重症度患者数の増加等にも対応できるように、柔軟な看護職員配置を可能とする体制が不可欠である。

  • 北海道の特定機能病院を事例として
    大場 久照
    原稿種別: 事例報告
    2015 年15 巻4 号 p. 261-266
    発行日: 2015/03/01
    公開日: 2021/08/25
    ジャーナル フリー

     本研究では公的病院の一つである特定機能病院のウェブサイトのJIS X 8341-3:2010に基づくウェブアクセシビリティと医療情報へのアクセシビリティを検証することを目的とする。

     北海道の特定機能病院の2013年12月1日現在のウェブサイトのトップページを対象とした。ウェブアクセシビリティの検証ツールにはmiCheckerを用いた。評価は総合評価(0〜3点)と知覚可能、操作可能、理解可能、頑健性の項目別評価(0〜100点)に加え、各項目で問題ありと判断された箇所を評価した。さらに、医療情報(セカンドオピニオン、がん手術・治療実績)へのアクセシビリティも調査し、JISに準拠する大阪大学医学部附属病院のウェブサイトと比較検証した。

     総合評価は札幌医科大学附属病院2点、北海道大学病院1点、旭川医科大学病院0点でJISに準拠していなかった。項目別評価では理解可能と頑健性については3病院とも高評価であったが、北大と旭川医大では知覚可能と操作可能の評価が顕著に低く、その原因はページ内の画像に対する代替テキストがないことであった。セカンドオピニオンの情報は札幌医大にはトップページにメニューがあったが、他の3病院はトップページにメニューがなく情報到達までに時間を要した。がん手術・治療実績の情報は4病院とも掲載されていなかった。

     北海道の特定機能病院のウェブサイトはウェブアクセシビリティの問題に加え、医療情報へのアクセシビリティにも問題のあることが示唆された。

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