日本医療マネジメント学会雑誌
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事例報告
病院医療者に対するケースメソッド式退院支援教育プログラムの開発と実践
次橋 幸男
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2015 年 16 巻 3 号 p. 147-151

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抄録

 我が国では、医療機関の機能分化が進められている。一方で、急性期医療の現場から医療機関の都合のみによって早期退院を促すことは、患者や家族に負担を強いることにもつながりやすい。このような状況の中で、患者が継続的な医療や介護が受けられるように、病院医療者には医療・介護・生活を繋ぐ退院支援マネジメント能力が求められている。そこで、我々は問題発見・意思決定力を養う学習方法として、ビジネス教育に用いられているケースメソッド教育に注目した。ケースメソッド教育では、教育的な事例(ケース)を用いて、学生同士の間、学生と講師の間で積極的にディスカッションを行うことで、受講生の多様な意見を引き出し、問題解決能力を高めることを目的としている。今回、我々はケースメソッドを用いた退院支援教育プログラムを開発し、公益財団法人天理よろづ相談所病院に勤務する医療従事者に対して実践した。

 その結果、計57名の病院医療者が本プログラムを受講し、受講生の96%がプログラム内容に満足していると回答した。さらに、受講生の学びとして「退院支援に関する基礎的知識の習得」「受講生間のディスカッションからの学び」「多職種交流の場としての役割」「現状に対する問題意識の高まり」という4つの概念が抽出された。本プログラムは、退院支援に関する基礎的能力を提供しただけではなく、退院支援の基盤となる多職種ネットワーク構築に貢献した可能性がある。

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