2016 年 17 巻 2 号 p. 66-71
2011年7月1日から翌年6月30日の期間に1,000床の私立総合病院に入院し、経口薬を処方された15歳以上の患者を対象に、誤薬の発生に影響を与える要因をケースコホート研究にて評価した。
患者対象(コホート)からランダムサンプリングした患者(サブコホート)と誤薬が確認された患者(ケース)について、関連する情報を診療録およびインシデントレポートから収集し、誤薬の発生と各項目との関連性を分析した。さらに、比較的影響を与えていると思われる項目を説明変数にして、ケース、サブコホートを示す項目を目的変数とした多変量ロジスティック回帰分析を行い、各項目と誤薬の発生との関係を分析した。
分析の対象となった症例はケースが203例、サブコホートが196例であった。誤薬の発生と少なからず関連性を認めた17項目を説明変数にした多変量ロジスティック回帰分析を実施した結果、誤薬を起こしやすい項目は、保管場所の異なる薬剤がある、日常生活に支障のある視力障害がある、検査や術前術後などに伴う中止や再開があるであった。薬剤数については、その数が1剤増えると誤薬発生リスクが1.42倍になることが示された。
誤薬を回避するためには、薬剤保管の体制の検討や指示の変更点に対する薬剤師の介入と連携の強化、指示および処方と実施記録の連動等が望まれる。