日本医療マネジメント学会雑誌
Online ISSN : 1884-6807
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17 巻, 2 号
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原著
  • 深野 美紅, 難波 志穂子
    原稿種別: 原著
    2016 年17 巻2 号 p. 60-65
    発行日: 2016/09/01
    公開日: 2022/03/10
    ジャーナル フリー

     近年、入院期間の短縮化などにより退院支援を早期から始めることが求められている。多様なニーズを持つ患者に専門性の高い医療や一貫性のあるケアを提供し退院支援に結びつけるためにはチームワークが不可欠である。そこで、退院支援におけるチームワークを構成する要因を明らかにすることを目的とした。

     岡山大学病院病棟看護師362人を対象とし244人(67.0%)の有効回答数が得られた。調査用紙は、新たに作成した退院支援におけるチームワーク尺度(32項目7段階評価)と属性調査用紙を1セットとし、配布後留め置き法にて回収した。

     分析は、主因子法によるプロマックス回転を用いて探索的因子分析を行った。また、内的整合性はクロンバックα係数を算出した。退院支援におけるチームワーク尺度は、スクリームプロットを参考に3因子が抽出された。第1因子【個人の潜在的能力】、第2因子【チーム・コンピテンシー】、第3因子【リーダーの存在】と命名した。3因子の信頼性を、クロンバックα係数で検討したところ、第1因子0.942、第2因子0.897、第3因子0.717であった。属性ごとに退院時支援におけるチームワーク尺度の総合得点を検討した結果、職位、年齢、配偶関係、現部署への愛着の有無、現部署への信頼の有無で違いが認められた。退院支援におけるチームワーク尺度は3因子で構成され、信頼性を確保していた。仕事への愛着や同僚との信頼関係はチームワークに影響を及ぼすことが示唆された。

事例報告
  • 高橋 静子, 森山 仁美, 夏目 隆史, 中尾 教伸, 比江島 欣愼
    原稿種別: 事例報告
    2016 年17 巻2 号 p. 66-71
    発行日: 2016/09/01
    公開日: 2022/03/10
    ジャーナル フリー

     2011年7月1日から翌年6月30日の期間に1,000床の私立総合病院に入院し、経口薬を処方された15歳以上の患者を対象に、誤薬の発生に影響を与える要因をケースコホート研究にて評価した。

     患者対象(コホート)からランダムサンプリングした患者(サブコホート)と誤薬が確認された患者(ケース)について、関連する情報を診療録およびインシデントレポートから収集し、誤薬の発生と各項目との関連性を分析した。さらに、比較的影響を与えていると思われる項目を説明変数にして、ケース、サブコホートを示す項目を目的変数とした多変量ロジスティック回帰分析を行い、各項目と誤薬の発生との関係を分析した。

     分析の対象となった症例はケースが203例、サブコホートが196例であった。誤薬の発生と少なからず関連性を認めた17項目を説明変数にした多変量ロジスティック回帰分析を実施した結果、誤薬を起こしやすい項目は、保管場所の異なる薬剤がある、日常生活に支障のある視力障害がある、検査や術前術後などに伴う中止や再開があるであった。薬剤数については、その数が1剤増えると誤薬発生リスクが1.42倍になることが示された。

     誤薬を回避するためには、薬剤保管の体制の検討や指示の変更点に対する薬剤師の介入と連携の強化、指示および処方と実施記録の連動等が望まれる。

  • 依頼までの日数変化
    丹下 みつる
    原稿種別: 事例報告
    2016 年17 巻2 号 p. 72-74
    発行日: 2016/09/01
    公開日: 2022/03/10
    ジャーナル フリー

     聖マリアンナ医科大学病院メディカルサポートセンター(以下MSCとする)看護師(以下退院調整看護師とする)は、入院患者への退院支援と外来患者に対する居宅療養支援を主に行っている。先行研究では退院調整看護師による支援において、退院後の療養の場所により入院から依頼までの日数に差が認められた。その要因の一つは医療者の関わり方であることが明らかになった。退院調整看護師が参加する退院支援カンファレンスは、退院調整加算算定開始を機に2012年度4病棟から2013年度11病棟に増えている。今回、退院支援カンファレンスに参加することで得られた効果を明らかにした。支援件数は2012年度162件、2013年度166件だった。入院から依頼までの日数を比較したところ、入院から7日以内の依頼は2012年度50件(30%)であったが2013年度は72件(43%)に増加した。今回の研究により、退院後療養場所が自宅・病院・施設の症例において、入院から7日以内の依頼件数が増えており、支援患者の平均在院日数は短縮していた。退院調整看護師がカンファレンスに参加することで、入院時スクリーニング後の再アセスメントをする機会となり、また、カンファレンス参加者が退院支援に必要な知識を得ることができるため、入院7日以内の依頼数増加につながったと考えられた。

  • 仲吉 翔, 岩佐 紀輝
    原稿種別: 事例報告
    2016 年17 巻2 号 p. 75-78
    発行日: 2016/09/01
    公開日: 2022/03/10
    ジャーナル フリー

     飯塚病院では2011年10月、特別の療養環境に係る病室の患者に対し様々なサービスを提供する病棟コンシェルジュを導入した。当初は患者や職員からの認知が低く、利用が進まなかったため、「看護師の業務負担軽減」と「患者満足度向上」を目的として改善活動に取り組んだ。

     導入時の主な業務は「身の回りの清掃や話し相手等の入院生活サポート」等だった。2012年3月のアンケート結果によると看護師認知率は78%、看護師業務委託率は54%、患者認知率は80%、患者利用率は60%と導入効果は低かった。

     そこで、看護師業務負担の軽減策として入退院時の業務代行範囲の拡大を図り、患者満足度の向上策として買物代行業務等の患者がより望む業務を開始した。その後も業務の見直しを行い、コーヒーサービス開始や看護師以外との業務分担見直し等を実施した。

     2012年2月〜8月の業務改善およびその後の活動によって、2013年6月には看護師認知率は93%、看護師業務委託率は93%に上昇し、病棟コンシェルジュ1名あたりの入退院対応業務時間(午前中)は31.0分/日から62.5分/日に増加した。また、患者認知率は100%、患者利用率は100%に上昇した。

  • 高橋 正彦, 藤原 千尋, 大塚 眞哉, 岩垣 博巳
    原稿種別: 事例報告
    2016 年17 巻2 号 p. 79-82
    発行日: 2016/09/01
    公開日: 2022/03/10
    ジャーナル フリー

     2012年6月にがん対策推進基本計画が見直され、周術期口腔機能管理の重要性について明記された。術後合併症軽減や術後在院日数短縮を目的に、2012年度の診療報酬に周術期口腔機能管理料が新設された。井上病院は歯科が併設されていないため、福山市歯科医師会と医科歯科連携協定を締結し、2014年2月より運用を開始した。2014年2月から1年1ヶ月間に全身麻酔下手術が107例に行われ、75例に対して医科歯科連携による周術期口腔機能管理が実施されたが、緊急入院26例に対しては実施されなかった。

  • 竹内 朋子, 大久保 清子, 真田 弘美
    原稿種別: 事例報告
    2016 年17 巻2 号 p. 83-87
    発行日: 2016/09/01
    公開日: 2022/03/10
    ジャーナル フリー

     日本の看護師に対する現行のWLB(ワーク・ライフ・バランス)施策は、家族役割のある者の福利が最優先されており、単身看護師に業務の皺寄せが生じている可能性がある。本研究は単身看護師のワーク・ライフ・バランス(以下 WLB)の現状と、WLBの実現に望ましい労働条件を明らかにすることを目的とし、看護師15,025名を対象に無記名自己記入式質問紙調査を実施した。単身看護師と非単身看護師を比較した結果、単身看護師はより過重な労働条件を強いられ、心身共に疲弊しており、WLBを実現しにくい現状にあることが示された。特に夜勤回数の増加と残業時間の延長は、単身看護師のWLBを阻害する要因であることが明らかになった。今後の看護組織においては、働く者全ての福利を目指すWLB本来の理念に立ち返り、単身看護師のニーズも考慮した包括的なWLB施策を整備していく必要があることが示唆された。

  • 今井 千裕, 中尾 貴子, 服部 昇二, 田中 滋己, 山本 初実
    原稿種別: 事例報告
    2016 年17 巻2 号 p. 88-92
    発行日: 2016/09/01
    公開日: 2022/03/10
    ジャーナル フリー

     国立病院機構三重中央医療センターでは、2013年度に病院のバランスト・スコアカード(BSC)が適用された。これに先立ち、部門BSCとして治験管理室のBSCを以下の手順で作成した。我々は、まず、標準とする臨床研究コーディネーター(clinical research coordinator:CRC)業務別テクニカルスキル評価表を作成し、CRCのテクニカルスキルを評価した。その後KJ法で強み・弱みを洗い出し、臨床研究・治験活性化5か年計画2012を念頭においたSWOT分析を実施し、治験の質の向上と治験依頼数の増加、およびCRCの教育、治験の進捗管理などの方向性を含めた到達目標を設定したBSCを作成し、2012年度より運用した。この2012年度BSCは、顧客(患者満足度)、財務(新規治験受託、新規組み入れ症例数、治験実施率、治験完遂率)、内部プロセス(事務局・CRC業務マニュアル、時間外勤務時間の短縮、調査期間の短縮、研修会開催)、学習と成長(勉強会)の各視点で目標値を達成できない項目があった。今回、BSCの実績評価にCRCテクニカルスキル評価表の結果を加味して検討したことにより、当治験管理室の今後の課題と方向性を室員全員で共通認識できた。

  • 今井 千裕, 中尾 貴子, 服部 昇二, 田中 滋己, 山本 初実
    原稿種別: 事例報告
    2016 年17 巻2 号 p. 93-96
    発行日: 2016/09/01
    公開日: 2022/03/10
    ジャーナル フリー

     我々は、臨床研究コーディネーター(clinical research coordinator:CRC)の業務を標準化し到達目標を明確にするため、CRC業務別テクニカルスキル評価表を考案し、個々のCRCの技術・知識を自己評価した。この評価表は、20のCRC業務内容で構成されている。

     2012年のCRC業務別テクニカルスキル評価では、治験薬の管理、併用禁止薬、逸脱、関連部署との調整、GCP省令、スタートアップミーティング、治験審査委員会、新人教育、英語の習熟度の得点が全業務の平均より低かったが、2013年にはすべての業務において自己評価が改善していた。しかし、治験薬の管理以外の得点は依然全業務の平均より低かった。CRCテクニカルスキル評価表は、当治験管理室のCRCの技能が把握でき、先を読んだ業務管理のできるCRCを養成するためのツールになりうると考えられた。このCRCテクニカルスキルの評価結果をバランスト・スコアカードに取り込むことによって、CRCの到達目標、あるいは治験管理室の適格な行動目標が設定できる可能性がある。

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