医療マネジメント学会雑誌
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術後鎮痛剤に麻薬を使用した人工膝関節置換術クリィティカルパスの臨床効果
中川 義浩
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2001 年 2 巻 2 号 p. 191-194

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抄録

人工膝関節置換術 (以下TKA) のクリィティカルパス (以下CP) で使用されている術後鎮痛剤を、検討し改訂を行った。TKAの鎮痛剤の使用状況は、CP改訂前は術直後にジクロフェナック坐剤を挿入した症例や、硬膜外からブピバカインだけが持続注入されている症例が多く、麻薬の使用がほとんどなく、術後痛みを訴える患者が多かった。麻酔科医に相談の結果、CP改訂後はTKA術後の硬膜外鎮痛に積極的にモルヒネを使用することになった。麻薬が使用できない場合はブプレノルフィン坐剤を術後2回ルーチンで使用することを整形外科医に提案し了承された。また疼痛時には現行どおりペンタゾシン注またはジクロフェナック坐剤を使用することにした。理学療法士と相談し、痛みがリハビリの妨げになる場合リハビリの1時間前にジクロフェナック坐剤を使用することとしCPに記載した。またモルヒネとブプレノルフィン坐剤の副作用に対応する為に、制吐剤の予防投与を提案し了承された。また医療者用のパンフレットで副作用の嘔吐と呼吸抑制を必ず確認するように依頼した。
その結果TKAのCP (改訂前16名、改訂後22名) の術後24時間以内の鎮痛薬使用回数は、改訂前3.2回から改訂後1.9回に有意に (P=0.05) 減少した。術後21日間の鎮痛薬使用回数は14.5回から17.9回に増加した。リハビリの一本杖までの所要日数は12.5日から9.1日に短縮され、退院時屈曲は108.1度から118.9度に改善した。術後鎮痛薬の変更により、術後疼痛の改善と鎮痛薬による副作用の軽減が得られ、リハビリが順調に実施され臨床効果が得られた。薬剤師がCPに関わることは有用である。

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