2003 年 4 巻 2 号 p. 329-334
医療改革についての方向性のひとつは医療機関からの情報公開である。患者と医師間における情報の非対称性の問題は、一般に患者側に発生し、その大きさによって患者が不利益を被る可能性があるが故に問題とされる。一方医療という財においては、例えば年代別、職業別などに、罹患しやすい病気を統計的に知りえても、各個人がいっ、どのような病気にかかるかは予測できないという不確実性がある。
平成11年の受療行動調査によると、消費者は入院や外来など医療機関受診の際に「家庭・友人・知人」からの情報を重視しているという。われわれが健常人に行った調査では「友人」による情報を信頼している。
ブランドは情報の非対称下でのシグナリング機能を果たし、評判によって無駄な探索を止め、取引費用を削減する効果がある。またブランドは、非排他性、非競合性をもち、外部性も持っために公共財であるという考え方もある。この視点から、医療機関が消費者の選択基準になりえるブランド形成の努力をおこなうことも重要ではないか。