抄録
慢性期患者を対象とする療養病棟における看護ケアは、i) 効果が現れるのに長期を要する点、ii) ナースだけでなく介護職員がケアに参加する点、iii) 日常生活の援助が中心となる点で、急性期の看護ケアとは異なる。それらの特性を考慮し、療養病棟に相応しい看護ケアが行われるように工夫した独自のクリティカルパスを考案し、その効果を検討したので報告する。
クリティカルパスは長期計画を示したオーバービュー形式のパスと、それに連動した短期目標を示し、看護記録、検温表、指示簿を包括したオールインワン形式のパスの2つから構成した。記録時間を短縮し、かつ看護師・介護職員間の情報を共有化するため、従来のSOAP方式を廃し、ケア計画に関連した観察項目のチェック方式とした。脳血管障害による低運動性症候群の患者9名 (男4名、女5名、年齢77.3±4.7歳) において、クリティカルパス導入前後の2ヶ月間で、生活行動の獲得に進展がみられたかを項目別に検討した。経口摂取、頸部拘縮、自発語において有意な改善が見られた。一方排泄や移動に関する動作の改善は見られなかった。
このクリティカルパスは看護ケアの効率化及び標準化を可能にするだけでなく、慢性期患者の生活行動獲得の事例を増やすのに有用であると考えられた。