医療マネジメント学会雑誌
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看護基礎教育におけるシミュレーター活用の評価
心臓病患者シミュレーター「イチロー」を用いて
伊藤 登茂子浅沼 義博猪股 祥子
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2003 年 4 巻 3 号 p. 406-411

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抄録

高階が開発した心臓病患者シミュレーター「イチロー」を用いて、75名の3年次看護学生に心音の聴取を中心としたフィジカルアセスメント教育を行った。まず循環器系の身体診察に関するテストを行い、次に「イチロー」を用いて90分間の演習を行った。そして演習終了時に再びテストを行い、かつ学生に自己評価をしてもらった。
テストは独自に作成し、視診・触診に関する問題15点と、聴診に関する問題15点からなり、合計30点満点で構成した。
結果は、視診・触診問題は演習前10.8±1.9点、演習後13.3±1.2点、聴診問題は、各11.3±3.4点、12.7±2.8点であった。また、総点は、演習前22.1±4.1点、演習後26.0±3.4点であり、いずれも演習後の成績が有意に良好であった。また、成績向上の度合いは、視診・触診問題が聴診問題のそれより有意に良好であった。テスト結果の相関分析では、演習前合計点と演習後合計点の間に相関が認められた。
従来は主に現任教育 (OJT) に依存していたフィジカルアセスメント技術の習得を、看護基礎教育において行うことの可能性が示された。また、シミュレーターを用いてフィジカルアセスメントの教育を効果的に行うには、学生の到達レベルや実習経験を考慮する必要があると推察された。

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