抄録
急性期合併症なく血行再建を施行した急性心筋梗塞患者の場合, クリティカルパスからの脱落およびクリティカルパス期間からの逸脱は少ないと予想される. そこで実際のバリアンスを分析し改善の必要性を検討した. 1年間で本院に入院した急性心筋梗塞症患者64例のうち, 急性期合併症なく血行再建を施行して2週間のクリティカルパスを用いた連続28例を対象とした. 2週間以内で退院した患者をA群 (n=18), 2週間を越えて入院した患者をB群 (n=10) とした. 両群間において患者背景, 最高血中CPK濃度, 責任冠動脈部位, 残存狭窄, ステント長および血行再建術を施行して24時間以後に発生した後期合併症を比較した. また, B群で実際のバリアンス理由を検討した. 全例でクリティカルパスからの脱落はなかった. A群と比べてB群では, 最高CPK濃度は有意に高く (A群: B群=1058: 2620IU/ml, p<0.0001), 残存狭窄は高い傾向にあり (p=0.069), ロングステントの使用頻度も高く (p=0.049), 後期合併症は有意に多かった (p<0.01). B群におけるバリアンス理由は, 一時的ペースメーカ挿入, 歩行障害, 薬剤性肝障害の合併があったが, 実際には追加検査および冠危険因子是正のための入院延長が多かった. 2週間を越えて入院を要した症例は, 梗塞巣が大きく, 後期合併症や残存冠動脈狭窄を認める重症例が多かった. しかし, 実際の入院期間の延長理由は検査待ちや冠危険因子是正が多く, 検査の効率化と患者教育が重要と考えられた. また, 梗塞巣の小さい症例ではさらに入院期間を短縮したクリティカルパスが使用可能と考えられた.