抄録
全日本病院協会の全会員病院に対し、医療安全管理体制や活動の状況、重大な医療事故の経験の有無、事故発生後の原因究明の体制などに関するアンケート調査を実施した。回収率は24.0%(506/2,108) であった。
その結果、規模の (病床数の) 大きい病院ほど重大事故の経験があり、特に200床以上の病院の1/3は、患者が死亡、あるいは重篤な後遺障害を残すような医療事故 (以下「重大事故」) の経験があることが分かった。また、重大事故の原因究明の組織に、院外のメンバーを入れているケースは依然として少なかったが、約1/3の病院は法律家を中心とした外部の専門家の支援を受けていた。さらに、重大事故に関わった職員に対し、心理カウンセリングなどの支援や一定期間の休職や休養を与えたケースは少なく、当事者の職員の支援体制がほとんど整っていない状況が窺われた。原因究明の際には、約1/3の病院が院内に医療安全や事故調査の専門家がいないことが困ったと回答し、事故後の対応では、患者や家族だけでなく、当事者の職員のケアにも困ったと回答する病院が多かった。さらに、ADR (裁判外紛争解決) に対する病院の期待が非常に大きいことも分かった。
今後は、重大事故の原因究明を行える専門家の育成と増員、そしてADRの導入方法の検討などが強く望まれている。