抄録
輸液ルートは形状や素材の違いだけではなく、使用する薬剤の種類や電子医療機器との併用により使用方法が複雑かっ多岐にわたっていることから医療事故が発生しやすい。われわれは、ポリ塩化ビニル (PVC) 非含有クローズドシステムー体型輸液ルートを院内標準輸液ルートとして選定し、輸液ルート作成時間とコストについて、個別部品を組み合わせる従来法と比較しながら、標準化が及ぼす影響について検討を行った。その結果、輸液ルートの作成時間は、一体型キットの使用により1本あたり96.1±22.4秒から55.8±12.0秒へ有意な時間短縮がされた。特に化学療法室においては、1日あたりの輸液ルート作成時間は97.0±22.0分から22.0±3.0分へと短縮され、業務効率の向上に寄与することが明らかになった。よって、作業に必要な所要時間の短縮には標準ルートを導入する価値は高いと考えられた。しかしながら、材料費の比較では、標準ルートの導入は個別部品を組み合わせるよりも1ヶ月あたり1,283,424円の追加費用がかかることが明らかになった。今後は、実際の臨床現場でインシデント件数や内容の変化、カテーテル関連感染症の軽減などを検証し、標準化の有用性と費用対効果についての総合的評価を行うことが課題である。