2015 年 12 巻 p. 49-57
本研究は、大学体育実技授業を履修している大学生のメンタルヘルス状態について、ストレス度を反映する唾液中アミラーゼを用いて運動強度や時間の異なる運動条件下で比較し、体育実技授業のメンタルヘルス改善効果について生理生化学的指標から客観的に評価する手法の確立を目的として行われた。大学体育実技に唾液アミラーゼを導入する妥当性について、唾液アミラーゼモニターを用い、その有用性、急性運動時の変動、運動習慣者との比較、他のストレスマーカーとの比較から検討を行った。その結果、急性運動時の変動においては、唾液アミラーゼモニターの測定値とELISAの測定値の間には有意な相関関係が認められず、急性運動による心理的変化を測定可能なストレスマーカーとして用いることは困難である可能性が示された。一方で、運動習慣者との比較では、日常的な運動習慣者において唾液アミラーゼモニターの測定値が有意に高い値を示したことから、高強度運動による生体ストレス反応や日常的な運動習慣の違いを反映する指標として利用することができる可能性が示された。これらのことから、1回の授業におけるストレス解消効果など、短期間の運動のメンタルヘルス改善効果を評価する上で、唾液アミラーゼモニターを利用することは難しいものの、長期間の運動の効果を評価する上では活用可能な指標とすることができる可能性が考えられた。