大学体育学
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事例報告
オンゴーイング法と授業日誌法の併用による体育授業の改善
中澤 謙西原 康行
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2018 年 15 巻 p. 12-21

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抄録

省察的実践は専門家がその実践経験から学びを得るスキルである.自分の授業を改善するためには,教員自身の経験に基づく授業省察による,課題と解決方法の明確化が不可欠である.省察的実践を見直す方法としてオンゴーイング法と授業日誌法が挙げられる.オンゴーイング法は授業実践中の授業認知を呟き記録する方法で,授業日誌法は授業後に授業実践を振り返り,記述を通して暗黙的な授業認知の明示化を図る方法である.オンゴーイング法と授業日誌法を併用し,省察的実践を見直し授業を改善する方法の検証を本研究の目的とした.オンゴーイング法による発話記録を「認知」「課題」「見通し・改善案」「肯定的捉え」「気づき」に分類し,その出現数を量的に評価した.日誌記述を「具体的な学生の姿」「用いた手立て」「状況の解釈や判断」「手立てを用いた理由」「教授上の示唆」に分類し,授業認知過程の整理・分析を行った.本研究で得られた知見は以下の通りである.

①オンゴーイング法による発話記録及び授業日誌法により整理された日誌記述の分析を通し,教員の授業認知過程が明らかになった.

②オンゴーイング法の実施により,教員のメタ認知が施されて学生の姿及び授業技能の認知が行われた.

③暗黙的な授業中の認知は日誌記述の過程で明示化され,次時授業に向けて認知・判断の枠組みが修正された.

④授業日誌法を通して修正された認知・判断の枠組みを手掛かりにし,授業実践中に学生の姿及び教員の授業技能の認知が行われた.

⑤発話記録と日誌記述の分析により,③,④による循環的な授業の見直しでは授業がうまく進行しなくなり,否定的フィードバックを用いた授業場面における教員による学生の姿の認知の特徴が抽出された.

⑥上記場面において,授業実践中の教員の情意過程はオンゴーイング法によりメタ認知され,授業後に授業日誌法により捉え直されていた.その結果,教員の学生の姿・授業技能に対応する認知の枠組みが修正された.

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