ミルクサイエンス
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総説
Lactobacillus acidophillus Er-2 株317/402 “ナリネ株”の臨床使用における治療効果
Gagik AkopyanRosa MadoyanEduard Dilayan金谷 幸一
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2004 年 53 巻 2 号 p. 37-62

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抄録

 “NARINE”株こと Lactobacillus acidophilus Er-2 Strain 317/402は,1953年旧ソビエト連邦アルメニア共和国においてヤンゼルキャン博士により,新生児の胎便中における163種類の菌分離により発見された。その特長として,培養温度は36℃~40℃で,PH=3.0の耐酸性により胃酸や胆汁酸に強く,微好気性であり,耐熱性として,人間の体温(40℃)以上では生存しにくく,人由来のため,腸内の定着性は良好であり,毒性においても,40年以上の各種疾患,あらゆる年代の治療経験において副作用の報告はなく,プロバイオティクスの条件を満たし,かつ有用性が認められている。“NARINE”という名前は,ヤンゼルキャン博士の孫娘の名前だが,彼女が生後まもなく難治性腸炎を患っていたために,当時研究していたこの株を投与したところ,見事に回復したため,これに因んで名づけられた。残念なことに“NARINE”株に関する多くの研究が,西側諸国の学術分野において,半世紀もの間公表されてない。その理由として当時の共産圏においては普及のための宣伝活動が必要なかったことや,極限ストレス状態にある宇宙飛行士に対する“NARINE”株の使用研究などは,軍事機密として公表できなかったものと推察される。今回我々は,その臨床分野に応用された研究の一部ではあるが,レビューとして報告する機会をいただいた。この報告が,今後の日本の乳酸菌研究者における“NARINE”株の理解ならびにアルメニア共和国と日本の乳酸菌研究の発展に意義あることとなるよう希望する。

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© 2004 日本酪農科学会
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