大学体育学
Online ISSN : 2189-8766
Print ISSN : 1349-1296
ISSN-L : 1349-1296
原著論文
運動行動の促進を意図した「健康・スポーツ科学講義」の効果
-行動変容技法の導入-
橋本 公雄
著者情報
ジャーナル オープンアクセス

2006 年 3 巻 p. 25-35

詳細
抄録

本研究の目的は,1年生前期に行われる「健康・スポーツ科学講義」の中で,行動科学に基づく運動行動変容技法を指導し,身体活動や運動・スポーツ活動の運動行動が促進できるかどうか調べることであった.対象者は1年生男女344名であり,1クラスを介入群,3クラスを非介入群とした.介入群にはセルフ・モニタリングノートと歩数計を全員に配布し,運動行動変容技法が前期の前半で指導した.運動行動の指標として,主観的身体活動量,Kasari(1976)の身体活動指標(改訂版),行動変容のステージ,歩行移動と階段利用の頻度を用いた.また,運動行動の促進への行動変容技法や講義の有効性について調べた.その結果,介入群では,運動行動の促進に歩数計やセルフモニタリングノートは役立っており,講義も非介入群より運動行動の促進に「役立った」と回答した者が多かった.このことから,講義は認知的介入の機能を果たしていることが指摘された.また,主観的身体活動量の増加,上位ステージへの移行,講義の有益性では介入効果がみられたが,実際の行動面(運動量得点,歩行移動頻度,階段利用頻度)では顕著な相違はみられなかった.本研究では,運動行動変容技法の指導効果は部分的に支持された.また,運動行動の促進に対する意識と実際の行動とのズレ(非一貫性)が生じる原因について論議され,今後の方法論的問題が指摘された.

著者関連情報
© 2006 全国大学体育連合
前の記事 次の記事
feedback
Top