大学体育学
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原著論文
大学体育教員の教授力量に関する研究
―再現認知による初心者教員と習熟教員の比較―
西原 康行高橋 一栄佐藤 勝弘生田 孝至
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ジャーナル オープンアクセス

2007 年 4 巻 p. 3-13

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抄録

大学体育は,最終的な社会と学校の橋渡し役として,生涯スポーツにつなげる最も重要な役割を果たさなければならない.したがって教員自らの授業を日々省察(リフレクション)しながら力量を高めてよりよい授業を行なっていくことが必要であり,教員の力量形成を検証し,実践につなげていく研究が,小・中・高等学校以上に必要である.教員の視点に立った研究は,これまで教育技術論や授業研究(分析)として教員と学習者の相互作用という観点で積極的に行なわれている.近年は,ALT−PE観察法や学習空間全体をとらえたVTR映像による再現認知が行なわれてきている.本研究では,これまでの学習空間全体を撮影したVTR映像の再現認知に加えて,教員の頭に CCDカメラをつけて,「教員自身の視点での授業」を撮影し,そのVTR映像を再現認知することの有効性を明らかにした.

結果として,学習空間全体をとらえたVTR映像を観ながらの再現認知と比較し,教員の視点をとらえたVTR映像による再現認知は,「ここを観ている」という語りが多く,授業をリアルに再現できることから,多くの認知を引き出すことができた.また,言語教示として量的に考察できる教員の力量や表層的に視覚として見ることが可能な認知だけでなく,微細かつより深みのある認知の語りを導き出すことに有効であった.その微細かつ深みのある認知とは,本研究では,習熟教師が,否定的(矯正的)働きかけを直接教示せずに肯定的働きかけによって授業に勢いをつけていくことや,事前認知を行なっていること,時間や空間の個と全体を行き来しながら授業を進めていることが明らかとなった.

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© 2007 全国大学体育連合
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