大学設置基準大綱化以降,大学体育の教員ポストの規模は縮小している.一方,供給側の大学院は増えており,需給が不均衡となっている.このため,大学院修了後,定職に就ける者の割合が少なくなっている.修了後の就職先が確保できないとなると大学院進学を考慮している学生の進学意欲をそぐことになり,優秀な学生を確保することが難しくなるだろう.その結果,体育学の研究・教育に意欲と関心を持ち,高い能力を備えた後継者が確保できなくなり,研究・教育活動が衰退しかねない.そこで,全国大学体育連合の会員(349大学,94短大)を対象として,大学保健体育教員の養成・確保について実態と意識を調査した.平成18年3月下旬に質問紙を郵送し,4月から6月下旬にかけて,ファックスで回答を受け付けた.有効回答は149校で,回収率は33.6%であった.
得られて結果は以下の通りである.
(1)大学設置基準等が大綱化された平成3年以降,98大学・13短期大学で保健体育教員が退職し,その合計数は372人にのぼる.しかし,後任補充(専任.任期付き含む)は245人,すなわち約66%に過ぎない.3人退職すると2人しか後任補充できていないことになる.また,スポーツ科学系の学部 ・学科開設という特殊な例を除くと,約半数しか補充できていないことになる.
(2)平成22年度までに,57大学・3短期大学で保健体育教員が退職する見込みがあり,その合計数は113 人にのぼる.しかし,見込まれる後任補充(専任.任期付き含む)は68人に過ぎない.3人退職すると2人しか後任補充できないと予想されている.特に国公立大学での採用の見込みが少ない.
(3)保健体育教員を採用する場合,「公募しない」が21校あったが,その他は何らかの方法で公募するとしている.そして,その方法は,「状況により公募方法は異なる」が最も多く,73校であった. その他の方法としては,「自校ホームページにて公募する」(61校),「JRECIN(研究者求人情報)にて公募する」(33校),「全国大学体育連合ホームページにて公募する」(28校)とインターネットの利用が多い.
(4)保健体育教員を採用する場合の雇用形態は,「終身雇用(任期付きの採用はしない)」は40%にとどまっている.この数は「任期付き採用のみ」(11%)と「任期付き採用の場合がある」(25%)を加えた数に匹敵する.
(5)保健体育教員を採用する場合に重視する事項としては,「教育能力・経験」(115校)と「研究能力・業績」(97校)が多く,次に「人間性」(67校),「専門実技・指導可能実技」(67校)と続いている.
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