大学体育学
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4 巻
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表紙、目次など
原著論文
  • ―再現認知による初心者教員と習熟教員の比較―
    西原 康行, 高橋 一栄, 佐藤 勝弘, 生田 孝至
    2007 年 4 巻 p. 3-13
    発行日: 2007年
    公開日: 2018/01/09
    ジャーナル オープンアクセス

    大学体育は,最終的な社会と学校の橋渡し役として,生涯スポーツにつなげる最も重要な役割を果たさなければならない.したがって教員自らの授業を日々省察(リフレクション)しながら力量を高めてよりよい授業を行なっていくことが必要であり,教員の力量形成を検証し,実践につなげていく研究が,小・中・高等学校以上に必要である.教員の視点に立った研究は,これまで教育技術論や授業研究(分析)として教員と学習者の相互作用という観点で積極的に行なわれている.近年は,ALT−PE観察法や学習空間全体をとらえたVTR映像による再現認知が行なわれてきている.本研究では,これまでの学習空間全体を撮影したVTR映像の再現認知に加えて,教員の頭に CCDカメラをつけて,「教員自身の視点での授業」を撮影し,そのVTR映像を再現認知することの有効性を明らかにした.

    結果として,学習空間全体をとらえたVTR映像を観ながらの再現認知と比較し,教員の視点をとらえたVTR映像による再現認知は,「ここを観ている」という語りが多く,授業をリアルに再現できることから,多くの認知を引き出すことができた.また,言語教示として量的に考察できる教員の力量や表層的に視覚として見ることが可能な認知だけでなく,微細かつより深みのある認知の語りを導き出すことに有効であった.その微細かつ深みのある認知とは,本研究では,習熟教師が,否定的(矯正的)働きかけを直接教示せずに肯定的働きかけによって授業に勢いをつけていくことや,事前認知を行なっていること,時間や空間の個と全体を行き来しながら授業を進めていることが明らかとなった.

  • -動作意識及び荷重分布の分析による学習過程の多角的分析-
    北村 勝朗, 山内 武巳, 高戸 仁郎, 安田 俊広
    2007 年 4 巻 p. 15-25
    発行日: 2007年
    公開日: 2018/01/09
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究は,スノーボード・カービングターン初習者である大学生が3日間の集中講習の中で,a)動作・技術理解,b)動作イメージ,c)動作結果に対する感覚的理解,が指導によってどのように変化していくのか,実際の雪上での動作前後の感覚情報の内省報告による発話の分析と動作映像の分析,更には,講習前後日の荷重分布の変化の分析による多角的な分析を行うことで,スノーボード学習者を指導する際の客観的かつ理論的裏づけに基づいた有効な指導法を提案することを目的とする.分析の結果,動作習得過程における動作意識は,運動構造の認知,動作感覚の洗練,及び動作イメージの形成の3要素によって構成されている点が明らかとなった.これらの要素は,自身の中の「運動の不感性」を低下させる上で有効に作用しつつ,指導者の意図する動作イメージを共有する方向で機能している点が示唆される.こうした点から,カービングターン初習者に対する短期集中指導内容の構成として,学習初期には目的とする動作全体の理解を促す言語的・非言語的情報を用いた教示と同時に,学習者の感覚に注意が向けられるようなフィードバックによる自身の動作感覚の鋭敏化を促すことが,自身による動作イメージの形成に効果的に作用することが推察される.また,荷重変化からの検討により,講習前はフロントサイドターンの局面において前足かかと親指側に明らかな荷重分布は観察できなかったが,講習後は講習前と比べてフロントサイドターン中の前足かかと親指側に明らかな荷重分布が観察された.

事例報告
  • -「プールでの運動に対する考え方」と「運動実践へのステージ」の変容を目指して-
    正野 知基
    2007 年 4 巻 p. 27-36
    発行日: 2007年
    公開日: 2018/01/09
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究は,大学体育の授業で水中運動を紹介,実施することによって,プールでの運動が,健康のための運動の選択肢の一つとなる可能性を高めることができるかどうかを探ることを目的とした.また,授業の中で,現代の健康問題と運動・スポーツの重要性についての講義も行い,授業を通じて学んだことが日常生活へ一般化できるかどうかについても検討した.受講直後のアンケート調査から,プールでの運動に対しての考え方が肯定的な方向へ変化したことが示唆され,生涯にわたって健康のための運動に,水中運動がその選択肢として入る可能性が高まったのではないかと考えられた.また,運動・スポーツや健康に関する意識の変化が本授業によってもたらされたことが示唆され,受講前と比較して運動実践へのステージの有意な上昇傾向が認められた.受講1年後の追跡調査から,将来的に健康の維持・増進のための運動として水中運動を選択する可能性は,授業による体験によって高まり,維持されているものと考えられた.しかし,授業を通じて学んだことが日常生活へ一般化できたかどうかについては,運動実践へのステージが受講前と有意な差が認められない状態となったことなどから,授業によって肯定的な方向に向いた意識に実行を伴うようにするための何らかの支援が必要であることが示唆された.

  • -オープンキャンパス参加者および学内の他領域教員・職員を対象に-
    森田 啓, 西林 賢武
    2007 年 4 巻 p. 37-43
    発行日: 2007年
    公開日: 2018/01/09
    ジャーナル オープンアクセス

    1990年代以降,大学で体育を行うことの根拠が問われている.本研究は,大学体育のFDに関する取り組みのひとつであり,オープンキャンパスにおいて,参加者および学内の他領域教員や職員に本学の体育のさまざまな試みを紹介することを目的とした体育科目の体験コーナーを設けたことにより,得られた成果を参加者の意識調査の結果を中心に検討したものである.

    オープンキャンパス参加者の意識調査は,本学オープンキャンパス参加者の中で,体育のブースを訪れてくれた人を対象に,アンケート用紙を用いて行った.ブースを訪れてくれた人には,フライングディスクの的あてを体験してもらい,体育の授業を紹介したパネルを読んでもらった.調査の結果,大学でも体育の授業があることを知らない者が60%いたが,大学でも必要と考える者は約90%いた.

    他領域の教員や職員に対する本学の体育紹介については,体育のブースを通りかかった教職員に声をかけて紹介を行った.オープンキャンパスに来ている教職員は,皆担当があって忙しくしていたため,感想を聞くことができた人はわずかであったが,多くの教職員にとって,大学の体育は「単に何かのスポーツを行っているだけ」「高校の繰り返しのような内容」と思われていたようで,本学の体育で取り組んでいるいくつかの新しい試みに興味・関心を示してくれる教職員もいた.

    今後も,本学で新しく試みた成果をきちんと公表し,さらに新しい試みを開始し,大学体育の必要性,重要性を提示していきたい.

研究資料
  • -授業展開における実態と課題を中心に-
    出雲 輝彦, 木幡 日出男, 川北 準人
    2007 年 4 巻 p. 45-56
    発行日: 2007年
    公開日: 2018/01/09
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究の目的は,各大学における留学生と日本人学生が混在する体育実技授業(以下,「混在授業」という.)の実態を把握かつ分析することにより,混在授業において教員が留意する必要のある授業展開上の課題について究明することであった.

    予備調査として,私立T大学の混在授業担当教員3名に対してカード式BSを実施し,混在授業における問題点を抽出・分類するとともに,分析枠組構築及び実態調査票作成にあたっての指針を得た.実態調査Ⅰでは,83大学にアンケート調査を依頼し37大学から回答(大学回収率44.6%)を得た.実態調査Ⅱでは,私立T大学の混在授業受講学生に対してアンケート調査を依頼し117人(日本人学生82人,留学生35人)から回答を得た.

    本研究により,1)留学生の混在率が高まるほど授業がやりにくくなること,2)日本人学生と留学生では体育レディネス(スポーツ経験他)に違いがあり,それにより混在授業がやりにくくなること,3)教員,日本人学生及び留学生の3者ともに混在授業を国際交流や異文化間コミュニケーションの機会として期待している傾向があることなどが明らかになった.したがって,混在授業を担当する教員は,授業展開する際,日本人学生と留学生の体育レディネスの違いに配慮すること,また,スポーツを通じた国際交流や異文化間コミュニケーションについても授業において配慮することが必要であることなどが示唆された.

  • 小林 勝法, 山里 哲史
    2007 年 4 巻 p. 57-64
    発行日: 2007年
    公開日: 2018/01/09
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    大学設置基準大綱化以降,大学体育の教員ポストの規模は縮小している.一方,供給側の大学院は増えており,需給が不均衡となっている.このため,大学院修了後,定職に就ける者の割合が少なくなっている.修了後の就職先が確保できないとなると大学院進学を考慮している学生の進学意欲をそぐことになり,優秀な学生を確保することが難しくなるだろう.その結果,体育学の研究・教育に意欲と関心を持ち,高い能力を備えた後継者が確保できなくなり,研究・教育活動が衰退しかねない.そこで,全国大学体育連合の会員(349大学,94短大)を対象として,大学保健体育教員の養成・確保について実態と意識を調査した.平成18年3月下旬に質問紙を郵送し,4月から6月下旬にかけて,ファックスで回答を受け付けた.有効回答は149校で,回収率は33.6%であった.

    得られて結果は以下の通りである.

    (1)大学設置基準等が大綱化された平成3年以降,98大学・13短期大学で保健体育教員が退職し,その合計数は372人にのぼる.しかし,後任補充(専任.任期付き含む)は245人,すなわち約66%に過ぎない.3人退職すると2人しか後任補充できていないことになる.また,スポーツ科学系の学部 ・学科開設という特殊な例を除くと,約半数しか補充できていないことになる.

    (2)平成22年度までに,57大学・3短期大学で保健体育教員が退職する見込みがあり,その合計数は113 人にのぼる.しかし,見込まれる後任補充(専任.任期付き含む)は68人に過ぎない.3人退職すると2人しか後任補充できないと予想されている.特に国公立大学での採用の見込みが少ない.

    (3)保健体育教員を採用する場合,「公募しない」が21校あったが,その他は何らかの方法で公募するとしている.そして,その方法は,「状況により公募方法は異なる」が最も多く,73校であった. その他の方法としては,「自校ホームページにて公募する」(61校),「JRECIN(研究者求人情報)にて公募する」(33校),「全国大学体育連合ホームページにて公募する」(28校)とインターネットの利用が多い.

    (4)保健体育教員を採用する場合の雇用形態は,「終身雇用(任期付きの採用はしない)」は40%にとどまっている.この数は「任期付き採用のみ」(11%)と「任期付き採用の場合がある」(25%)を加えた数に匹敵する.

    (5)保健体育教員を採用する場合に重視する事項としては,「教育能力・経験」(115校)と「研究能力・業績」(97校)が多く,次に「人間性」(67校),「専門実技・指導可能実技」(67校)と続いている.

  • 青木 敦英, 下村 尚美, 宮村 茂紀
    2007 年 4 巻 p. 65-71
    発行日: 2007年
    公開日: 2018/01/09
    ジャーナル オープンアクセス
奥付、裏表紙など
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