2008 年 5 巻 p. 13-26
国立大学法人東京農工大学の教養科目「スポーツ・健康科学実技」は,健康関連体力テストと体力トレーニングを実施して,大学新入学生の健康関連体力の維持・増進を目指している.授業プログラムは,①入学直後のプレテスト,②約8週間の体力トレーニングとスポーツ実技,③学期末のポストテスト,から構成される.本研究は,健康関連体力テストの過去5年間の横断的データを分析し,大学教育における当該授業プログラムの役割と意義について考察した.
本学新入学生の入学時において,男子はほとんどの体力要素が全国平均よりも劣っていること,女子は心肺持久力を除けばほぼ全国平均レベルにあることがわかった.特に注目すべき点は,男女に共通して,他の体力要素に比べて持久的能力が顕著に低かったことである.約8週間の体力トレーニングは,本学新入学生の健康関連体力を全般的に改善することに成功したが,心肺持久力は依然として全国平均を下回る水準であった.授業プログラムの特徴および授業実施上の様々な工夫(例えば,記録カードの利用)は,学生の積極的な授業参加を促進し,健康関連体力の維持・増進の必要性に対する理解を深めることができたと思われる.
「スポーツ・健康科学実技」の授業デザインは,本学新入学生の健康関連体力の向上という直接的貢献のみならず.心身の健康に関する知識の習得や運動・トレーニング実践能力の育成にも貢献できることが示された.