大学体育学
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原著論文
PAC(個人別態度構造)分析にみる体育授業における「個」の学びの構造
井上 則子
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キーワード: 個の学び, 体育授業, PAC分析
ジャーナル オープンアクセス

2010 年 7 巻 p. 3-12

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抄録

運動技能の習得を目的とする大学体育の授業において,学生は運動技能を習得するだけにとどまらず様々な学びを経験する.本研究では「個」の学びの構造を明らかにするために,主として硬式テニスの実践を展開している「スポーツと身体スキル」を受講した学生2名(経験者と初心者)を対象に,個人の態度構造を測定するために開発されたPAC分析を実施した.

その結果,経験者は他者との関係性から生み出された学びを経験しており,一方初心者は主として運動技能習得の学びを経験していた.他者との関係の中で展開される経験は,社会的スキルの獲得や向上に影響を及ぼすが,そのためにはある一定レベルの運動技能の習得が必要であり,従って基礎技能を持たない場合では,最初の学びは技能習得が主となり,運動技能の発達に伴い学びの経験も「個」の中で変容する.同じ授業を受講しても,運動技能のレベルによって学びの経験は異なること,また個人内部でも学びの経験は変化すること,つまり個人的経験内容の変異が大きいことがPAC分析の結果,明らかになった.PAC分析では被験者が意識していない潜在的な部分を,客観的なデータを用いて表面化させ,数量的な分析では看過されてしまう「個」の質的な変容も把握することが可能となる.学びそのものは個々人の特有な体験,すなわち学生一人ひとりの内的な世界であるが,「個」の学びの構造を理解するためにPAC分析は有効であり,従ってそれは授業の振り返り作業の一環として授業評価に活用する可能性も示唆された.

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© 2010 全国大学体育連合
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