大学体育学
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7 巻
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表紙、目次など
原著論文
  • 井上 則子
    2010 年 7 巻 p. 3-12
    発行日: 2010年
    公開日: 2018/01/09
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    運動技能の習得を目的とする大学体育の授業において,学生は運動技能を習得するだけにとどまらず様々な学びを経験する.本研究では「個」の学びの構造を明らかにするために,主として硬式テニスの実践を展開している「スポーツと身体スキル」を受講した学生2名(経験者と初心者)を対象に,個人の態度構造を測定するために開発されたPAC分析を実施した.

    その結果,経験者は他者との関係性から生み出された学びを経験しており,一方初心者は主として運動技能習得の学びを経験していた.他者との関係の中で展開される経験は,社会的スキルの獲得や向上に影響を及ぼすが,そのためにはある一定レベルの運動技能の習得が必要であり,従って基礎技能を持たない場合では,最初の学びは技能習得が主となり,運動技能の発達に伴い学びの経験も「個」の中で変容する.同じ授業を受講しても,運動技能のレベルによって学びの経験は異なること,また個人内部でも学びの経験は変化すること,つまり個人的経験内容の変異が大きいことがPAC分析の結果,明らかになった.PAC分析では被験者が意識していない潜在的な部分を,客観的なデータを用いて表面化させ,数量的な分析では看過されてしまう「個」の質的な変容も把握することが可能となる.学びそのものは個々人の特有な体験,すなわち学生一人ひとりの内的な世界であるが,「個」の学びの構造を理解するためにPAC分析は有効であり,従ってそれは授業の振り返り作業の一環として授業評価に活用する可能性も示唆された.

  • 楠原 慶子, 大森 芙美子, 佐藤 文, 清水 静代, 佐々木 玲子, 鈴木 明
    2010 年 7 巻 p. 13-24
    発行日: 2010年
    公開日: 2018/01/09
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究の目的は、短期大学生(~322名)を対象に、X線の被爆がない超音波法を用いて踵骨の骨強度を測定し、これまで有意な相関が報告されている体重や体脂肪率などの体格指標に加えて、形態測定による周囲径や超音波法による筋厚や皮下脂肪厚、また筋力や柔軟性などの体力要素が踵骨骨強度推定の指標として有効か検討することである。体格指数(身長、体重、BMI、%fat)はいずれも踵骨骨強度と有意な相関関係にあったが体重が最も強い相関であった。上腕後部、大腿後部の筋厚と5部位の総筋厚が踵骨骨強度と有意な関係であった。皮下脂肪厚には腹部、大腿後部、5部位の総皮下脂肪厚に踵骨骨強度との有意な関連が認められた。上腕部、大腿部、腹部周囲径はいずれも踵骨骨強度との有意な関連が認められた。体力テストを実施した結果、すべての種目が全国レベル以下であった。その中で背筋力、握力と踵骨骨強度に相関が認められた。これらの結果から、若年女性を対象とした踵骨骨強度を推定する指標として、ある特定の部位の筋厚、皮下脂肪厚、また両組織を合わせた周囲径が有効である可能性が示唆された。また筋張力発揮能力とも骨強度との関連が示唆されたことから、筋力測定が骨強度推定の指標として有効であることが示唆された。

  • ―プロジェクトアドヴェンチャー・プログラムを導入したキャンプ活動におけるリーダーシップ及びフォロワーシップの養成―
    清水 安夫, 尼崎 光洋, 煙山 千尋, 宮﨑 光次, 武田 一, 川井 明
    2010 年 7 巻 p. 25-39
    発行日: 2010年
    公開日: 2018/01/09
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究の目的は,①リーダーシップを測定する尺度(Leadership Assessment Scale for Group Activities:以下,LASGA)及びフォロワーシップを測定する尺度(Followership Assessment Scale for Group Activities:以下,FASGA)の開発と,②プロジェクトアドヴェンチャー・プログラムを用いた野外教育活動が,リーダーシップ及びフォロワーシップを促進させる可能性の検討であった.

    研究1では,大学生352名(男性162名,女性189名,未回答1名)を対象に,2008年7月に,個人的属性,LASGA,FASGAで構成された質問紙調査を行った.研究2では,プロジェクトアドヴェンチャー・プログラムに参加した57名(男性31名,女性26名)の群(以下,PAG)と比較検討を行うための79名(男性31名,女性48名)を統制群(CG)とに質問紙調査を行った.調査は,2008年9月に行い,PAGはプロジェクトアドヴェンチャー・プログラム参加の初日と最終日に実施し,CGは同時期に中4日を空けて実施した.

    LASGA及びFASGAの因子構造を明らかにするために,探索的因子分析を行った.また,抽出された各因子の信頼性の分析,尺度全体の構成概念妥当性を検討するための検証的因子分析を行った.さらに,プロジェクトアドヴェンチャーの効果を検証するために,混合計画の二要因分散分析(群×時間)とBonferroni法による多重比較検定を行った.

    因子分析の結果,LASGAは5因子(各4項目)の合計20項目,FASGAは4因子(各3項目)の合計12項目が抽出され,信頼性及び妥当性の各指標も許容範囲であることが示された.また,混合計画の二要因分散分析の結果,プログラム前後の比較において,LASGAの「Decisions」,「Persistent」,「Confidence」,「Norm」,「Responsibility」の各下位尺度に有意な増加が認められた.また,FASGAにおいても,「Third Personal Support」,「Circumstantial Judgment」,「Second Personal Support」,「Group Norm」に有意または有意傾向の増加が認められた.

    本研究の結果,開発されたLASGA及びFASGAの両心理尺度は,一定の信頼性及び妥当性を兼ね備えていることから,大学生のリーダーシップ及びフォロワーシップを測定できるものとして有益である.我が国における先行研究においては,フォロワーシップを測定する尺度が見られないため,FASGAの開発は新規性があると考えられる.また,プロジェクトアドヴェンチャーを導入した野外教育活動の授業は,コミュニケーションやソーシャルサポートを得る機会を増加させることにより,大学生のリーダーシップ及びフォロワーシップを養成する上で有効であることが示された,

  • 林 容市, 森田 啓, 鬼澤 陽子, 西林 賢武
    2010 年 7 巻 p. 41-56
    発行日: 2010年
    公開日: 2018/01/09
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    本研究の目的は,工学設計教育への新たな知見を提供するために,システマティックな分析に基づく教授方略を用いた大学体育授業の実践が,コミュニケーション行動に対する自己効力感へ及ぼす影響について検討することであった.

    大学生72名を対象が,ランダムに3つの群に分けられ,バレーボールを教材に採用した授業に参加した.その結果,学習者間のディスカッションを通じて複数選択肢から学習内容を選択・決定する教授方略が,授業後のコミュニケーション行動に関する自己効力感や満足度などに最も有益であることが示唆された.今回の検討により,教授方略を適切に用いることによって,教養科目としての大学体育授業が,工学設計教育の一端を担うものとなりうる可能性が示唆された.

研究資料
  • 山津 幸司, 堀内 雅弘
    2010 年 7 巻 p. 57-67
    発行日: 2010年
    公開日: 2018/01/09
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    【目的】本研究の目的は、実技を中心に行われる大学体育(研究Ⅰ)および実技と講義を融合した大学体育(研究Ⅱ)が受講大学生の日常の身体活動およびメンタルヘルスに及ぼす影響を評価することであった。

    【方法】研究Ⅰの対象者は実技中心の大学体育を受講した体育受講群78名(女性56.4%、年齢18.1±0.3歳)と選択履修のため受講しなかった対照群69名(女性52.2%、年齢18.2±0.7歳)の計147名、研究Ⅱの対象者は実技と講義による大学体育を受講した体育受講群35名(女性34.3%、年齢19.0±1.4歳)と対照群105名(女性72.4%、年齢18.6±1.4歳)の計140名であった。体育授業の内容は、研究Ⅰではテニスなどのスポーツ活動およびレクリエーション活動で構成された実技のみの授業、研究Ⅱでは計8回の健康の知識を学ぶ座学および計6回のスポーツ実技の融合形式で構成された授業であった。対照群は体育受講群と同じ学部から大学体育を履修していない者を選んだ。全対象者には初回と最後の授業時に身体活動とメンタルヘルス(抑うつ、不安、不眠、日中の過剰な眠気)からなる質問表調査が実施され、研究参加の同意を得られた者から回収された。

    【結果】研究Ⅰでは、体育受講群の歩行活動量が介入後に対照群より有意に高値を示し、対照群の特性不安得点は増加し悪化したが、体育受講群では維持し悪化しなかった。研究Ⅱでは、体育受講群の高強度および総身体活動量が男性受講学生では対照群より有意に増加したが、女性受講学生には同様の有意差は認められなかった。また、体育受講群の日中の過剰な眠気が男子受講学生で対照群より改善する傾向が認められた。

    【考察】以上の結果から、実技を中心に展開する大学体育が受講学生の特性不安を軽減させる可能性があること、また実技と講義を融合した大学体育は男子受講生の身体活動を増強し日中の過剰な眠気を軽減させる可能性があることがそれぞれ示された。今後、同様の研究を継続し明確な因果関係を構築する必要がある。

  • 木内 敦詞, 中村 友浩, 荒井 弘和, 浦井 良太郎, 橋本 公雄
    2010 年 7 巻 p. 69-76
    発行日: 2010年
    公開日: 2018/01/09
    ジャーナル オープンアクセス

    生活習慣と学力が関連することはこれまで経験的に述べられてきた.しかしながら,それを十分に裏づける学術的データはわが国においてほとんど提出されていない.本研究は,大学初年次生の生活習慣と修学状況(取得単位数)との関係を明らかにすることを目的とした.近畿圏にある工科系大学男子1068名が本研究に参加した.彼らの初年次前期取得単位数は以下のとおりであった;25単位以上(52%,N=554:A群),20−24単位(30%,N=317:B群),15−19単位(12%,N=131:C群),15単位未満(6%,N=66:D群).前期授業終了時における健康度・生活習慣診断検査(DIHAL.2,徳永2003)から,以下のことが明らかとなった.すなわち,「食事」「休養」尺度および「生活習慣の合計」において,D<C<B<A 群の順位傾向とともに,D群に対するA群の有意な高値(P <.01)が示された.特に,「食事の規則性」「睡眠の規則性」スコアにおいては,明確なD<C<B<A 群の順位性とともに,食事や睡眠を軸とした “規則的な生活リズム” の重要性が示された.これらの結果は,大学入学直後から教育の枠組みの中で,健康的なライフスタイル構築のための健康教育を実施することの必要性を支持している.

  • 北 徹朗, 山本 唯博
    2010 年 7 巻 p. 77-86
    発行日: 2010年
    公開日: 2018/01/09
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究では、全国の大学でソフトボール授業を担当している教員に対するアンケート調査によって、雨天時の授業の現状と視聴覚教材のあり方について探ろうとした。アンケート調査は278名に対して郵送法により行われ、128枚の有効回答を得た(有効回収率46.0%)。調査の結果、雨天等により、屋内で授業を実施せざるを得ない場合には、そのほとんどが体育館などの屋内体育施設を利用して他の実技種目が行われていた。また、約80パーセントが「ソフトボールの理論(講義)の時間は設定されていない」と回答し、その中で視聴覚教材の使用についても「使用していない」との回答が半数以上であった。その理由としては「身体を動かし運動させることが授業の目的」であるとの内容が多く挙げられた。大学ソフトボール授業担当教員から特に求められているのは、30分から40分程度の長さの映像で主に「バッティング」、「ピッチング(ウィンドミル)」、「ルール」といった内容が把握できる視聴覚教材であった。また、既存の資料には見あたらない「歴史や文化」といった内容の教材を求める声も多く、ソフトボールの技術のみならず、その発祥やルールの成り立ちからソフトボールを理解できる資料を求めるコメントが複数寄せられた。

  • 角田 和彦, 佐々木 敏, 星野 宏司, 蓑内 豊, 三宅 章介
    2010 年 7 巻 p. 87-96
    発行日: 2010年
    公開日: 2018/01/09
    ジャーナル オープンアクセス

    大学における体育のねらいは、学生に運動刺激を与え運動習慣を定着させるための知識を習得させ、技能を獲得させることである。発育や発達の程度を測定し、適当な運動刺激を提供するために学生の身体の状況を知ることが重要である。本研究の目的は、北星学園大学男子学生の体力の推移を分析し、今後の体育授業の課題を見いだすことである。1975年から2006年までの間に、本学の体力診断テストに参加し、入学時に18歳であった男子学生を分析の対象とした。

    本研究で見いだされた知見を以下に示した。

    1.身長と体重は向上し大きくなった。しかし、ローレル指数は変化が認められない。

    2.筋力は大きく低下し、今後も低下する傾向が予測される。

    3.柔軟性は大きく低下してきたが、近年は低下が収まる傾向にある。

    4.敏捷性や瞬発力には経年変化が認められず、総合的な運動能力の低下はみられない。

    5.全身持久力は、最近の13年で急激に低下した。今後はさらに低下する傾向が予測される。

奥付、裏表紙など
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