本研究の目的は,急性期病院において高齢者夫婦世帯のどちらかが突然脳血管障害を発症し意思疎通が困難となった場合に,代理意思決定を行った高齢配偶者の入院から退院に至るまでの体験を明らかにすることである。研究参加者5 名に対し半構成的面接を行い,質的帰納的に分析を行った。その結果,高齢配偶者は,手術,転院(退院),医療 処置の出来事について代理意思決定を行っていた。そして手術のことを【医師に任せるより仕方がない】【決断するのは自分しかいない】,転院(退院)のことを【折り合いをつけながら最終的に決断するのは自分】,医療処置のことを【自らの判断で選択する余地がない】と捉えていた。医療者は,選択肢の提示により高齢配偶者の代理意思決定の自覚が強くなることを考慮しながら,説明内容,方法,タイミングなどを工夫し,配偶者がどの出来事を問題視しているのかを一緒に考えていく姿勢が重要であると考えられた。