日本プロテオーム学会大会要旨集
日本ヒトプロテオーム機構第5回大会
セッションID: S1-3-3
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ケミカルプロテオミクスの最前線
ケミカルゲノミクスを目指したリバースプロテオミクス
*吉田 稔
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抄録

化学を武器に挑む生物学であるケミカルバイオロジーが世界的な注目を集めている。その中心となる概念は、古典遺伝学における突然変異を小分子に置き換えて標的タンパク質の同定や機能解析を行うケミカルジェネティクスである。しかし、歴史的に天然物化学が強い我が国では、こうした言葉が誕生する前から特異的な活性を有する天然物の作用機構を明らかにしようという研究が優れた成果を挙げてきた。演者らのグループは微生物の生産するトリコスタチンA、トラポキシン、レプトマイシンB、などの標的分子を解明し、それらがヒストン脱アセチル化やタンパク質の核外輸送など、重要な細胞内機能分子であることを明らかにしてきた。最近では、スプライソソームに特異的に結合し、スプライシング反応を阻害するとともにイントロンを含むmRNAの翻訳を誘導する驚くべき化合物を見いだしている。これらのケミカルバイオロジーを拡張し、ゲノム規模で組織的、系統的に化合物を見出し、生命現象を解明するためのツールとして活用していく、というのがケミカルゲノミクスの理念である。そこからは直接創薬につながる化合物が出てくることも期待されている。しかし、現状ではその基盤となる技術や材料の確立が十分とは言えない。演者らは動物細胞のモデル生物として優れている分裂酵母を選び、そのゲノムにコードされるORFを全てクローン化し(ORFeome)、それらに蛍光タンパク質や小分子タグ(FLAG2-His6)を付加して細胞内局在(Localizome)や電気泳動上の位置(Mobilitome)を網羅的に決定した。これらのリバースプロテオミクス情報や発現クローンライブラリーを用いた新しいケミカルゲノミクス戦略について解説したい。

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© 2007 日本プロテオーム学会(日本ヒトプロテオーム機構)
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