主催: 日本ヒトプロテオーム機構
ゲノムプロジェクトの終了宣言が行われ、NIHによるGenome to Life Roadmapが発表された。その柱の一つがケミカルジェノミクスであることが宣言されて久しい。そして、この宣言に呼応し、欧米各国はケミカルジェノミックス、あるいはケミカルバイオロジーに関する研究投資が盛んに行われ始めた。事実、米国においても、巨額の研究予算がアカデミアの各研究施設に投入されケミカルバイオロジー・プロジェクトが様々なレベルで展開しようとしている。その基本的な戦略は、なるべく大規模なケミカルライブラリーを構築するとともに、スクリーニングセンターを設立し活性化合物を取得するための研究ネットワークを構築し、基礎研究者と合成化学者のコーディネーションを図り化合物主導の生物学を展開していくということのようである。 それに対して我が国は、限られた予算・リソースの中で、単に欧米に追従しても意味がない。明確な戦略や独自性・優位性がない、無策なプロジェクトを展開しては誰も幸せにはならないのである。我々は過去5年間、大規模なタンパク質相互作用ネットワーク解析行ってきた。そして、これを踏まえて「日本」のケミカルバイオロジープロジェクトをスタートさせた。何故なら、殆どの化合物は何らかのタンパク質に作用しその薬効を顕すからである。 本講演では、タンパク質ネットワークを俯瞰することにより明らかとなった疾患関連遺伝子の機能と疾患発症メカニズム等を概説するとともに4-21)、そのネットワーク情報と次世代天然物化学を駆使した化合物スクリーニング戦略を紹介する。本プロジェクトに於いては、生体システムの制御上、重要と思われるタンパク質、またはタンパク質相互作用をターゲットとした統一的なスクリーニングを実施し、得られた活性化合物の評価も行う。