主催: 日本ヒトプロテオーム機構
膜蛋白質は細胞外からのシグナル伝達、イオンの透過、エネルギ変換など生体内の重要な機能を担うため、その機能解明は重要である。さらに、上梓されている薬物の半数以上が、膜タンパク質を標的タンパク質としていることを考えると、生命現象の深い理解のみならず、新規薬物のデザインの観点からも、膜タンパク質・リガンド複合体における、リガンド上の膜タンパク質結合面を同定する必要性が増してきている。 構造生物学的手法の一つである核磁気共鳴法(NMR)は、タンパク質や核酸など生体高分子の立体構造や相互作用様式に関する情報を我々に提供する。しかしながら、NMRで立体構造を求めることができるタンパク質は、対象タンパク質の分子量がおよそ40K以下のものに制限されている。これは、高分子量タンパク質になるとNMRシグナルの線幅が著しく増大し、詳細な解析、特に構造決定プロセスに必要なNOE解析が著しく困難になることに起因する。 上で述べたNMRの制限は膜タンパク質複合体に対する解析にも当然当てはまる。したがって、膜タンパク質の相互作用を研究する場合、適切なNMR測定法およびNMRサンプル調製法の開発が必須である。われわれは、以上の問題意識に基づき、新規NMR測定法として、交差飽和法および転移交差飽和法を考案し、コラーゲン認識分子など不均一超分子複合体やイオンチャネルの構造機能相関を行ってきた。また、NMRサンプル調製法としては、新規膜タンパク質再構成法を構築し、イオンチャネルとそのポアーブロッカーとの相互作用解析に成功した。 本講演では、上記成果に関して、報告する。