日本プロテオーム学会大会要旨集
日本ヒトプロテオーム機構第7回大会
セッションID: S7-4
会議情報

プロテオミクスの薬学への応用
漢方医学における「証」の科学的解明を目指したプロテミクス解析
*済木 育夫
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

ヒトゲノム塩基配列の解読とともに、テーラーメード医療の実現に向けての取り組みが活発に行われてきている。疾患マーカーや創薬ターゲットの探索、疾患診断法の確立を目指して、近年著しい進歩を見せる遺伝子発現、多型解析やタンパク質発現解析の技術を利用して、生活習慣病や癌など様々な疾患で研究が進められている。これらポストゲノム関連の技術を応用し、これまで数多くの研究がなされながらも明確な解明には至っていなかった漢方医学における病態(証)の科学的解明に関する我々の試みについて紹介する。  漢方医学は多因子によって生じた病態(証)を多成分系である漢方薬を用いて治療するため、それらを科学的に解明していくためには、多様な因子を網羅的に解析できる手法を取り入れる必要がある。証はヒトが生来有する体質(遺伝的要因)と環境等によって変化する症候(環境的要因)の組み合わせにより規定される。前者を検索するのに多型解析が、後者には環境因子などの外部因子による病因に加え、表現型に結びついた病態に関連するタンパク質群を検索するためにプロテオーム解析が有力であると考えられる。   SELDI TOF-MS(Surface Enhanced Laser Desorption Ionization TOF-MS)を用いて、同意を得た関節リウマチと診断された患者の、桂枝茯苓丸による治療前後の血漿について、プロテインチップシステムを用いたプロテオーム解析を実施し比較検討を行い、患者特有のピークを見出す試みを行った。さらに、他の漢方方剤との比較や他の疾患(更年期疾患、アトピー性皮膚炎など)についても同様の検討を進め、それぞれのプロテオームパターンのデータベース化やマルチマーカーの探索を行いつつある。将来的には、得られた患者情報をデータベース化し、医師が漢方方剤を処方する際に活用できるような、証診断支援システムの構築を考えている。   本研究は、文部科学省知的クラスター創生事業「とやま医薬バイオクラスター」の「漢方方剤テーラーメード治療法の開発」プロジェクトおよび富山大学21世紀COEプログラム「東洋の知に立脚した個の医療の創生」の支援のもとで推進し、富山大学和漢薬研究所および医学部和漢診療学をはじめ、富山県立中央病院、株式会社インテックシステム研究所、株式会社ツムラとの共同研究である。

著者関連情報
© 2009 日本プロテオーム学会(日本ヒトプロテオーム機構)
前の記事 次の記事
feedback
Top