日本プロテオーム学会大会要旨集
日本ヒトプロテオーム機構第7回大会
セッションID: P-24
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ポスターセッション
卵巣明細胞腺癌におけるアネキシンIV複合体の機能解析
*荒川 憲昭田矢 史織川崎 博史宮城 悦子平原 史樹平野 久
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抄録

上皮性卵巣癌組織型の中で、明細胞腺癌(CCA)は早期で発見される率が高いにも関わらず再発率が高く、また化学療法に抵抗性を示す悪性度の高い組織型である。全卵巣癌組織型の明細胞腺癌が占める割合は、日本では欧米諸国に比べて高く、CCAの治療成績改善は我が国の喫緊の課題となっている。われわれは先にCCA細胞株のプロテオーム解析を行い、CCA細胞におけるアネキシンIV(ANX4)の発現量が、他の卵巣癌組織型と比較して著しく高いことを見いだした。またCCA細胞におけるANX4の発現をRNA干渉により抑制すると、細胞増殖能の有意な低下が見られたことから、ANX4が新しい分子標的治療の候補となることが示唆される。ほ乳類には12種類のANXアイソフォームが存在し、どれもが構造面でカルシウム結合ドメインを保有することが知られているが、それぞれの生理的役割はほとんど明らかになっていない。そこで本研究では、CCAにおけるANX4と相互作用するタンパク質を解析することで、ANX4の生理機能を明らかにすることを試みた。CCA細胞株OVISEからNP-40を含む緩衝液を用いてタンパク質を抽出し、一次元目にブルーネイティブPAGE、二次元目にSDS-PAGEで分離後、イムノブロットを行った。その結果、ANX4は単量体の分子量(36 kDa)よりも遥かに大きい約200 kDaおよび400 kDaのスポットとして検出された。ジギトニンを用いて抽出した場合でもANX4は同等の分子量のスポットとして認められたが、DDMやSDS存在下では検出されなかった。また、これら二種のスポットは、EGTA処理を行ってもその泳動度に変化は認められなかった。これらの結果は、ANX4はCCAにおいてカルシウムイオン非依存的に複合体を形成して機能することを示唆するものである。そこでANX4複合体を免疫沈降法により精製し、その構成成分をSDS-PAGE分離後、蛍光染色にて検出されたバンドを質量分析装置により同定した。またこれとは別に、本精製標品をショットガン法により解析した。その結果、翻訳伸張因子1αを代表として、核酸結合性のタンパク質が多数同定された。現在これらの分子群とANX4との相互作用の検証実験を行っている。

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© 2009 日本プロテオーム学会(日本ヒトプロテオーム機構)
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