日本プロテオーム学会大会要旨集
日本ヒトプロテオーム機構第7回大会
セッションID: P-26
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ポスターセッション
リンパ脈管筋腫症 (LAM) の血漿プロテオーム解析
*三崎 健太郎瀬山 邦明小川 秀興高森 建二柳田 光昭
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抄録
リンパ脈管筋腫症 (LAM) は肺に主病変を示す疾患であり、平滑筋細胞様の形態を示すLAM細胞のクローン性増殖を特徴とする。肺病変においては、直径が数ミリから数センチの嚢胞が肺実質の破壊に伴って多数形成され、病態が進行すると呼吸不全になり肺移植が必要となる。LAMは妊娠可能年齢の女性に主に発生することや、TSC遺伝子異常と関連することなどが明らかにされている。しかし、LAMの発生原因や誘導機構、進展機構については未解明の部分が多い。本研究ではこれらの解明や疾患のバイオマーカータンパク質の発見を目指してLAM患者の血漿プロテオーム解析を行い、健常者と比較して特異的あるいは顕著に増減するタンパク質を調べ、さらに絞り込んだ候補タンパク質に対して定量解析を行った。 疾患の重篤度により分類した女性のLAM患者(軽症患者と重症患者)および女性の健常者から血漿を採取した。健常者、LAM軽症患者、LAM重症患者の3つのグループそれぞれにおいて5人分の血漿をまとめてプールした試料に対して、血漿中に多量に含まれるタンパク質の特異抗体カラムによる除去を行った後に、陰イオン交換HPLCによりタンパク質を分画した。以上の処理により得られた試料中のタンパク質を2D-nanoLC/ESI/IT MSを用いて網羅的に解析して、健常者、LAM軽症患者および重症患者のいずれにおいても200種類前後のタンパク質を同定した。各タンパク質のペプチド同定数を判定基準として比較した結果、健常者に対して顕著に増減したタンパク質が軽症患者で23種、重症患者で21種認められた。これらのタンパク質には細胞外マトリックス構成分子やその制御に関わるもの、補体、免疫系、神経系に関わるもの等が主に含まれた。変動を示したタンパク質のうち着目したタンパク質の血漿中濃度を、健常者、LAM軽症患者、重症患者の各人に対してELISA法またはwestern blotting法で測定した。現在までに解析を行った2種類のタンパク質のうち1種類のタンパク質において質量分析の結果と相関する定量データを得ている。今後は他のタンパク質についても定量評価を行い、病態により変動するタンパク質と疾患との機能的関連を調べる予定である。
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© 2009 日本プロテオーム学会(日本ヒトプロテオーム機構)
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