日本プロテオーム学会大会要旨集
日本ヒトプロテオーム機構第7回大会
セッションID: P-27
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ポスターセッション
ランダム免疫法によるモノクローナル抗体の作製と腫瘍におけるその有用性
*影山 泰平古内 美穂松本 和将佐藤 雄一岡安 勲
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抄録

目的:本研究では、肺癌と膀胱癌において新たな腫瘍マーカーの確立のため、癌細胞を直接マウスに免疫し抗体を作製するランダム免疫法より、モノクローナル抗体を作製しているが、今回はその有用性を検討した。 方法:肺癌細胞株また、膀胱癌細胞株をマウス(BALB/c)に腹腔注射し、同じ細胞株を免疫染色するスクリーニング法で、網羅的に腫瘍特異的なモノクローナル抗体を作製するランダム免疫法により、抗体を作製した。また、抗癌剤感受性予知マーカーの作製のためcyclophosphamide(免疫抑制剤)を用いた、subtractive immunization 法にもこのランダム免疫法を応用しモノクローナル抗体を作製した。作製したモノクローナル抗体は、肺癌細胞株(LCN1、LCN2、N231、A549、LC2ad、RERFLCAI)、膀胱癌細胞株(TCCSUP、T24、5637、RT4)、胃癌細胞株(MKN45)、またシスプラチン(抗癌剤)耐性株(LCN1cis、LCN2cis、A549cis、LC2adcis、T24cis、MKN45cis)計17種類の細胞株を用いて免疫染色や免疫ブロット法を行った。免疫染色、免疫ブロット法より選択されたモノクローナル抗体は、免疫沈降法やプロテインアクティブアレイ法を用いて抗原タンパク質を単離し、トリプシンによるゲル内消化を行い、質量分析装置により抗原タンパク質の同定を行った。 結果と考察:ランダム免疫法により90個のモノクローナル抗体を作製した。そのうち、肺癌細胞株を用いて作製したモノクローナル抗体は70個、膀胱癌細胞株を用いて作製したモノクローナル抗体は20個ある。17種類の癌細胞株を用いた免疫染色と免疫ブロットより、特徴的な反応を示す30種のモノクローナル抗体を選択した。そのうち2種類のモノクローナル抗体の抗原タンパク質を同定したところ、CD44、CK18であった。これらの抗原は癌における報告がなされているが、アミノ酸配列の相同性は全くないが、同じ構造モチーフを有している2つの異なる抗原(タンパク質)を認識するモノクローナル抗体もあった。この抗体は、癌における報告がなされておらず、各種癌組織との反応性を検討している。本研究より、ランダム免疫法では、網羅的に腫瘍細胞に対する抗体が作製でき、従来のペプチドなどを免疫する方法では作製できない立体構造を認識する抗体の作製が可能であり、癌では報告がなされていない抗体の作製も可能であることが見出された。

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© 2009 日本プロテオーム学会(日本ヒトプロテオーム機構)
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