主催: 日本ヒトプロテオーム機構
リン酸化はタンパク質の機能を調節する代表的な翻訳後修飾であり、植物を含めた多くの生物種で広範囲の生命現象の制御に関わっている。あらゆる生命現象をタンパク質レベルで理解するにあたり、個々のタンパク質のリン酸化制御の有無、更にリン酸化制御を受ける場合のリン酸化部位の情報は、非常に重要な直接的な手掛かりとなり得るが、植物細胞内で実際にリン酸化制御を受けているタンパク質およびタンパク質上のリン酸化部位の情報は非常に限られていた。
近年の目覚ましい質量分析関連技術の発達は、タンパク質上のリン酸化部位の同定を比較的容易にしたものの、細胞粗抽出液のように非常に複雑な試料に含まれるタンパク質集団のリン酸化状態を網羅的に解析するためには、未だ乗り越えるべき課題が数多くある。
今回の研究では、植物材料用にリン酸化ペプチドの精製・濃縮法の改良・最適化を行うことにより、はじめて植物の細胞粗抽出液に含まれるタンパク質集団のリン酸化状態を大規模に解析することに成功し1)これまでにシロイヌナズナで4,000程度、イネでは5,000以上のリン酸化部位を同定した。
本発表では、植物の病害抵抗性の解明を目指して取り組んでいるリン酸化プロテオミクスについて、これまでに得られた結果を交えて紹介する。
1)Mol Syst Biol. 2008;4:193. Epub 2008 May 6.