2020 年 17 巻 1 号 p. 1-12
本研究は,空想傾性(日常生活において空想や想像に深く入り込む傾向)が,どのような人格特性および条件下でフロー体験とwell-being に促進的作用をもたらすかについて,大学生を対象とした質問紙調査を行い検討した。研究1 では,空想傾性と内的統制感がどのようにフロー体験に影響を与えるかについて検討した。その結果,空想傾性および内的統制感が高い人ほどフローを多く体験すること,空想傾性が高くかつ外的統制感が高い人はフローを体験しにくいこと,空想傾性が低ければ統制の位置はフロー体験に影響を与えないことが示された。研究2では,共分散構造分析によって空想傾性と内的統制感がフロー体験に影響を与えることでwell-being を促進するという因果モデルの作成を試み,そのモデルが感情的(快楽志向的)well-being と認知的(意味志向的)well-being の場合でどのように異なるか比較検討を行った。その結果,感情的well-being の促進には内的統制感の高さやフロー体験の頻度が関わってくるが,認知的 well-being への到達にはフローの体験頻度ではなくフローを体験しやすい人格特性が関わってくるなどwell-being への関与の仕方に差異が認められた。