日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー感染症学会誌
Online ISSN : 2435-7952
原著論文
深頸部膿瘍後嚥下障害における嚥下リハビリテーションと嚥下機能改善手術の効果
加藤 里菜久世 文也西堀 丈純青木 光広小川 武則
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2021 年 1 巻 1 号 p. 43-47

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抄録

深頸部膿瘍治療後には嚥下障害をきたすことがあるが,原因,頻度,予後については未解明な点も多い。頸部膿瘍後の嚥下障害に対する嚥下リハビリテーション,嚥下機能改善手術の効果を調査する目的で研究をおこなった。【対象】岐阜大学病院耳鼻咽喉科・頭頸部外科において,2012年7月から2019年4月に入院加療をおこなった28例を対象とし,治療後嚥下障害の有無,嚥下障害の重症度,治療,予後について,後方視的検討をおこなった。【結果】年齢は19歳–85歳(61±17歳),男女比17:11であった。深頸部感染症の分類では,ステージ1:7例,ステージ2:5例,ステージ3:12例,ステージ4:4例であった。嚥下障害は10例(35.7%)に認め,兵頭スコアは,5–11(8.0±2.0),Penetration Aspiration Scaleは,1–7点(6.0±2.5)であった。リスク因子として,CRP(p=0.0030),気管切開の有無(p=0.038)が抽出された。嚥下障害患者10例の内,5例はリハビリテーションによって嚥下機能の改善がみられ,4例は嚥下機能改善手術を施行した。入院日数は,嚥下障害のなかった18例で平均17日,嚥下障害を認めた10例で平均69日(p<0.001)であった。【結論】深頸部膿瘍患者の35.7%に嚥下障害を認めた。しかし,嚥下リハビリテーションや嚥下機能改善手術により,嚥下機能は回復可能であることが示唆された。

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