日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー感染症学会誌
Online ISSN : 2435-7952
原著論文
好酸球性副鼻腔炎における黄色ブドウ球菌エンテロトキシンの感作に関する検討
東山 由佳朝子 幹也宇都宮 敏生下野 真紗美井原 遥森田 瑞樹岩井 大
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2021 年 1 巻 1 号 p. 49-54

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抄録

はじめに:好酸球性副鼻腔炎は難治性・易再発性が問題となる疾患であり,近年その外的病原因子として黄色ブドウ球菌や真菌の関与が報告されている。黄色ブドウ球菌はスーパー抗原活性を有する外毒素であるエンテロトキシンを産生することが知られており,これはステロイド抵抗性にも関与するとされ,好酸球性副鼻腔炎のエンドタイプにおいても最も典型的な要素として関与が挙げられている。近年Type2炎症においてこの黄色ブドウ球菌エンテロトキシンの関連についての報告は増えているが実臨床における黄色ブドウ球菌エンテロトキシン感作に関する報告は少ない。今回我々は当科外来の好酸球性副鼻腔炎症例に対する血中の黄色ブドウ球菌エンテロトキシン特異的IgE抗体(SE-IgE抗体,以下SEと略す)陽性群・陰性群の患者背景,さらに好酸球性副鼻腔炎中等症・重症例で特異的SE-IgE抗体陽性例の臨床経過を検討した。

対象:関西医科大学総合医療センター耳鼻咽喉科外来における好酸球性副鼻腔炎患者で2019年8月1日~12月31日に特異的SE-IgE抗体を測定した48例。

方法:血清SE-IgE抗体(SEA, SEB-IgE)感作率,各種吸入抗原(花粉・真菌・ダニ・昆虫感作率;ImmunoCAP>class1),初診時総IgE値・末梢血好酸球数,副鼻腔CTスコア,%1秒量および患者の臨床経過について検討し,陽性群と陰性群の両群間での比較検討を行った。また好酸球性副鼻腔炎の重症度分類に応じた感作率についても有意差を検討した。さらに好酸球性副鼻腔炎中等症および重症例で特異的SE-IgE抗体陽性者の術後難治例についてステロイド全身投与もしくは生物学的製剤導入の有無についての臨床経過を検討し,SEA陽性例とSEB陽性例のそれぞれの当院術後の臨床経過も検討した。

結果:SE陽性群は総IgE値と血中好酸球数が有意に増多しており,好酸球性副鼻腔炎の重症例が多い傾向にあった。さらにSE陽性群は多重抗原感作も多かった。各種吸入抗原の感作率は重症・中等症・軽症間で有意差は認めなかった。また術後1年以内に全身ステロイド投与が必要であった症例はSE陽性群で有意に多かった。さらにSEA陽性例はSEB陽性例と比較して,術後下気道コントロール不良例がみられ,早期に全身ステロイド投与が行われていた症例が多い傾向にあった。したがって特異的SE-IgE抗体は好酸球性副鼻腔炎の難治症例や術後下気道コントロール不良例の予測因子として臨床的応用が期待できると考えた。

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