2022 年 2 巻 4 号 p. 121-128
舌下免疫療法(SLIT)は,1986年にScadding GKによって通年性アレルギー性鼻炎に対して初めて報告された。我々は日本医科大学倫理委員会の承認を得て,2000年からスギ花粉症に対するSLIT open studyを実施した。2004年厚生労働省の免疫学的疾患克服研究事業の一環として,スギ花粉症に対するSLITの二重盲検比較試験を行い,2005年にはスギ花粉の飛散が多い時期のスギ花粉症にSLITが有効であることを発表した。スギ花粉症に対するSLITの有効性は明らかであり,さらに錠剤タイプのSLITを3年間投与した後の実薬に対する後影響を二重盲検比較試験で報告し,試験終了後にIgEとIgG4に差があることを明らかにした。これらの抗体の産生について,さらなる検討が必要である。
1991年にFcε受容体Iの受容体であるCε3に特異性を有するヒト化モノクローナル抗体ruMAbE25(オマリズマブ)が開発され,現在すでに重症気管支喘息,重症蕁麻疹に世界的に適応がある。スギ花粉症に対するオマリズマブの臨床試験は2002年に開始され,2018年には,既存治療薬に抵抗性を示す重症スギ花粉症に対する臨床試験が実施された。抗ヒスタミン薬と鼻噴霧用ステロイドにより,症状が残る重症スギ花粉症患者さんの鼻症状および眼症状のスコアがプラセボよりも有意に改善され,オマリズマブの重症花粉症に対する2019年の適応取得につながった。今後も,新しい治療法開発で一般臨床の場に活用できるよう,研究を進めていく。