スギ花粉症は近年増加傾向にあり,舌下免疫療法(sublingual immunotherapy: SLIT)は唯一の根治治療として注目されているが,長期治療にも関わらず効果が乏しい症例が一定数存在するため,SLIT開始時に応答性を予測するバイオマーカーの開発が望まれている。スギ花粉抗原ペプチドCry j 1はHLA class II遺伝子領域に結合することが判明しており,今回,薬理遺伝学的な視点からHLA遺伝子多型とスギ花粉の感作・SLIT応答性との関連を検討した。まず,学生コホート544例を対象としてHLA遺伝子多型とスギ花粉の感作について分析したところ,HLA-DPB1*05:01がスギ花粉に易感作を示した。次に,スギ花粉SLIT患者203例を対象としてHLA遺伝子多型とSLITへの応答性を分析したところ,HLA-DPB1*05:01を保有するスギ花粉症患者は保有しない患者と比較してSLITに対する不応性が確認された。これらは,Cry j 1結合ポケットであるHLA-DPβ1のアミノ酸による立体構造的変化とそれぞれ関与していた。さらに,実臨床での応用を前提として遺伝子多型に特異的な一塩基多型(tag SNP)を同定し,従来のHLA遺伝子決定法より簡便に安価で検査可能な方法を確立した。HLA遺伝子多型がSLITの薬理遺伝学的バイオマーカーとなる可能性が示唆された。