日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー感染症学会誌
Online ISSN : 2435-7952
原著論文
歯性上顎洞炎50例の細菌学的,臨床的研究
杉田 麟也杉田 玄朝倉 清大川 洋長谷部 智之柳沢 英二
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2022 年 2 巻 4 号 p. 169-177

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抄録

異臭を訴える患者は嫌気性菌感染症であることは予測される。しかし,本邦では歯性上顎洞炎の原因菌について納得できる研究が行われていない。異臭を訴える片側性副鼻腔炎についてルーチン検査の範囲内で好気性嫌気性菌培養を行い,さらに歯性上顎洞炎であることの確認目的でコーンビームCT検査を行った。3年10ヵ月で50例,72株の細菌を分離同定した。微好気性連鎖球菌13株,偏性嫌気性菌59株(81.9%)であり,鼻汁を嫌気ポータに摂取出来なかった3例は好気性菌を検出した。嫌気性菌グラム陰性桿菌(AGNR)のFusobacterium nucleatum 45.8%,Prevotella 30.5%と多数を占め,グラム陽性球菌のParvimonasは22.6%にすぎない。1985年の口腔外科医によるとVeillonellaPeptostreptococcusが80%でグラム陰性桿菌Bacteroides 2.9% Fuso 0%に過ぎない。著者らが報告したAGNRは酸素感受性で厳密な酸素管理をしないと死滅しやすく,コロニー形成に時間がかかるので培養条件が守られないと検出率低下につながる。コーンビームCT及び東京歯科大の診察結果によると50例すべてが歯性上顎洞炎と診断された。原因は根尖炎,根尖のう胞,インプラントなど異物,抜歯後閉鎖不全などであった。3種類の嫌気性菌の抗菌剤感受性はLVFX,CAM,AZM,CLDMは耐性で,CVA/AMPCが優れていた。25例中22例はCVA/AMPC+AMPC 1,500 mg,分3,7日間投与で悪臭,膿汁が停止した。悪臭の原因は嫌気性菌が産生するガスと考えた。

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© 2022 日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー感染症学会
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