外耳道真菌症の多くは表在性で局所治療にて治癒に至ることが多いが,局所治療が無効で進行性鼓膜穿孔を生じるアスペルギルスによる耳感染症が存在する。
今回我々はアスペルギルスにより進行性鼓膜穿孔を生じ,内服により真菌感染を制御した3例を報告する。各症例は自覚症状が耳痛,耳漏と異なり,一般的な局所処置や外用薬では治療効果が得られず抗真菌薬内服により治癒に至った。各症例に共通する点として,β-D-グルカンの上昇を認めていなかった。1症例はAspergillus nigerによる急性発症であり鼓膜穿孔を閉鎖することができたが,残りの2症例はAspergillus fumigatasによる慢性経過であり,最終的に鼓膜穿孔は残存し,外耳道まで広範囲に粘膜が欠損し骨露出を認めた。
進行する鼓膜穿孔は,外耳道や鼓膜上皮の皮下膿瘍の発症後に,周囲に真菌性血栓が発生し,これに伴った鼓膜の無血管性壊死により出現する。早期治療により自然に鼓膜穿孔の閉鎖に至ることができるが,慢性化した場合には,周囲粘膜へ進展し,広範囲の組織障害を残す。β-D-グルカンが必ずしも陽性になるとは限らず,局所所見から抗真菌薬内服を選択することが大切である。