日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー感染症学会誌
Online ISSN : 2435-7952
症例報告
当科で経験したマダニ咬症の2例
増田 佐和子臼井 智子
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2022 年 2 巻 4 号 p. 203-208

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抄録

マダニはヒトに寄生して吸血し,時にさまざまな感染症を媒介する。我々は2例の異なった病態を呈したマダニ咬症を経験した。症例1は69歳女性で,全身倦怠感と頭痛,発熱と回転性めまい,全身の発疹が出現して発症6日目に受診した。前庭神経炎疑いで入院後,血小板減少,CRP,AST,ALT,LDHの上昇,低ナトリウム血症を認めた。内科に対診したところ発症1週間前に県南部で登山したことが判明し,日本紅斑熱と考えてミノサイクリン投与を開始した。その後腰部にマダニの刺し口が発見され,刺し口痂皮のPCR検査により日本紅斑熱と確定診断された。全身症状,検査所見とも順調に改善し,発症14日目に退院した。症例2は78歳女性で,市内の竹林に入った翌日に右耳痛と耳出血があり受診した。右外耳道入口部に白色球状の腫瘤を認め,マダニを疑って皮膚科に紹介したところタカサゴキララマダニによる吸血と診断され,完全除去されて治癒した。マダニ咬症は耳鼻咽喉科医にとってはまれであるが,さまざまな病態を呈する。その特徴と対応について知っておくべきと考えられた。

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© 2022 日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー感染症学会
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