日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー感染症学会誌
Online ISSN : 2435-7952
症例報告
加療により一部の麻痺が改善した多発脳神経麻痺合併頭蓋底骨髄炎の2症例
春名 良洋坂本 耕二佐久間 直子中石 柾松延 毅松根 彰志大久保 公裕
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2023 年 3 巻 1 号 p. 21-29

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抄録

頭蓋底骨髄炎(skull base osteomyelitis: SBO)は,側頭骨病変が中心のtypical SBOと斜台病変が中心のcentral SBOに分類される。今回我々は多発脳神経麻痺を伴い加療により一部の脳神経麻痺が改善したtypical SBOとcentral SBOの症例を1例ずつ経験したためその病態の考察を中心に報告する。症例1は糖尿病の既往がある92歳男性。耳掃除後の右耳漏および右顔面神経(VII)麻痺にて当科紹介となった。耳漏の細菌検査でMRSAと緑膿菌を検出し外耳道肉芽様病変の病理検査では悪性所見を認めなかった。造影CT検査にて茎乳突孔周囲の骨破壊を認め経過中に迷走神経(X)麻痺が出現した。typical SBOと診断し抗菌薬加療を行ったがX麻痺のみ改善しVII麻痺は残存した。症例2は糖尿病の既往がある76歳男性。鼻処置通院中に嚥下障害,左舌下神経(XII)麻痺を認め当科紹介となった。造影CT検査にて斜台部左側に骨破壊を伴う病変を認め全身麻酔下に上咽頭生検を行ったが,その際椎前筋後方から排膿を認めた。細菌検査で緑膿菌が検出され病理所見は悪性所見なくcentral SBOと診断し抗菌薬加療を開始した。経過中に左X麻痺を生じ治療によりXII麻痺のみ改善しX麻痺は残存した。麻痺出現の順番は炎症の波及経路を反映していると考えられた。今後SBOによる脳神経麻痺を改善させる因子等についての検討が必要と思われた。

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