2023 年 3 巻 1 号 p. 15-20
好酸球性副鼻腔炎(eosinophilic chronic rhinosinusitis:ECRS)は再発しやすく,難治性の疾患である。2020年3月に抗IL-4/13受容体抗体であるデュピルマブが鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎に対して,生物学的製剤の中では初めて保険適用となった。今回我々は,慢性副鼻腔炎の中でも特に治療に難渋するECRSの患者8例にデュピルマブを投与し,使用効果の検討を行った。対象は8例で,平均年齢は50.1歳,全例が1度の内視鏡下鼻副鼻腔手術歴を有していた。診断はJESREC studyに基づき,全例が重症に該当した。検討項目はデュピルマブ投与前と投与後4週,12週,24週時点での鼻茸スコア,鼻閉スコア,嗅覚障害スコア,末梢血好酸球比率,SNOT-22問診スコア,Lund-Mackay CT画像スコア(CTスコア),ステロイド経口内服の有無,有害事象である。投与後24週時点で鼻茸スコア,鼻閉スコア,嗅覚障害スコア,SNOT-22問診スコア,CTスコアは統計学的に有意に,かつ著明に改善した。デュピルマブはECRSの自覚症状・局所所見に著明な効果を示し,かつステロイド全身投与量を減らすことが出来た。