日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー感染症学会誌
Online ISSN : 2435-7952
3 巻, 1 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
総説
  • 松本 文彦
    2023 年 3 巻 1 号 p. 1-6
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/03/31
    ジャーナル フリー

    頭頸部外科手術において手術部位感染症(surgical site infection:SSI)が発生すると入院期間の延長,医療費の増加をきたす。さらに,頸動脈への感染などが生じると場合によっては生命に危険がおよぶ可能性がある。特に頭頸部領域においては,感染により創部の瘢痕化などをきたし嚥下機能の悪化などのQOL低下を招く可能性があり,単純に創傷治癒までの期間が延長するだけではない損失を生じうる。SSI対策に関しては海外および本邦から多くのガイドラインが発行され予防対策が示されている。SSI対策は慣習的に行うものではなくエビデンスに基づき,ガイドラインを参考にして行うべきである。SSIに対する対策は1:感染を起こしにくくする術前対策,2:手術中の術野の汚染を防ぐ(減少させる)対策,3:細菌による多少の汚染があっても,SSIが発症しないように,患者の抵抗力を高める対策の3点に集約される。本論文では各ガイドラインを紐解きこれらの3点からSSI予防対策について解説する。

原著論文
  • 渡邉 大輔, 渡辺 浩介, 小澤 仁, 島村 歩美, 藤森 功, 松崎 全成, 増山 敬祐, 松岡 伴和, 代永 孝明, 渡部 一雄, 櫻井 ...
    2023 年 3 巻 1 号 p. 7-13
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/03/31
    ジャーナル フリー

    2019年度のアレルギー性鼻炎の全国調査からスギ花粉症の有病率が著明に増加している実態が示されている。また,アレルギー性鼻炎と気管支喘息との合併率が高いことは知られているが,本邦でのアレルギー性鼻炎からみた調査報告は少なく,近年の耳鼻咽喉科を受診する花粉症症例における喘息の実態は明らかではない。今回我々は山梨県内と隣接地域の耳鼻咽喉科施設を受診したアレルギー性鼻炎患者3,804名を対象に1月から5月の花粉飛散時期における喘息症状の実態に関するアンケート調査を行った。医師から気管支喘息の診断を受けている症例は448例(12.3%)おり,直近12ヵ月の間に喘息症状があり,花粉飛散時期に喘息症状の増悪を自覚している症例は28例であった。また,喘息診断の有無に関わらず,喘息症状がある群では鼻症状が中等症以上の割合が高い結果であった。今回の調査から,喘息を合併する花粉症症例が一定の割合で耳鼻咽喉科を受診している実態が示されるとともに,喘息症状の悪化に花粉症による鼻炎症状の悪化が関連することが示唆された。また,喘息様症状があるにも関わらず喘息未診断で管理されていない症例も少なからずおり,花粉症診療の際にはこのような症例が耳鼻咽喉科を受診していることも念頭におき治療にあたる必要があると考える。

  • 高倉 苑佳, 門脇 嘉宣, 立山 香織, 平野 隆, 鈴木 正志
    2023 年 3 巻 1 号 p. 15-20
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/03/31
    ジャーナル フリー

    好酸球性副鼻腔炎(eosinophilic chronic rhinosinusitis:ECRS)は再発しやすく,難治性の疾患である。2020年3月に抗IL-4/13受容体抗体であるデュピルマブが鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎に対して,生物学的製剤の中では初めて保険適用となった。今回我々は,慢性副鼻腔炎の中でも特に治療に難渋するECRSの患者8例にデュピルマブを投与し,使用効果の検討を行った。対象は8例で,平均年齢は50.1歳,全例が1度の内視鏡下鼻副鼻腔手術歴を有していた。診断はJESREC studyに基づき,全例が重症に該当した。検討項目はデュピルマブ投与前と投与後4週,12週,24週時点での鼻茸スコア,鼻閉スコア,嗅覚障害スコア,末梢血好酸球比率,SNOT-22問診スコア,Lund-Mackay CT画像スコア(CTスコア),ステロイド経口内服の有無,有害事象である。投与後24週時点で鼻茸スコア,鼻閉スコア,嗅覚障害スコア,SNOT-22問診スコア,CTスコアは統計学的に有意に,かつ著明に改善した。デュピルマブはECRSの自覚症状・局所所見に著明な効果を示し,かつステロイド全身投与量を減らすことが出来た。

症例報告
  • 春名 良洋, 坂本 耕二, 佐久間 直子, 中石 柾, 松延 毅, 松根 彰志, 大久保 公裕
    2023 年 3 巻 1 号 p. 21-29
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/03/31
    ジャーナル フリー

    頭蓋底骨髄炎(skull base osteomyelitis: SBO)は,側頭骨病変が中心のtypical SBOと斜台病変が中心のcentral SBOに分類される。今回我々は多発脳神経麻痺を伴い加療により一部の脳神経麻痺が改善したtypical SBOとcentral SBOの症例を1例ずつ経験したためその病態の考察を中心に報告する。症例1は糖尿病の既往がある92歳男性。耳掃除後の右耳漏および右顔面神経(VII)麻痺にて当科紹介となった。耳漏の細菌検査でMRSAと緑膿菌を検出し外耳道肉芽様病変の病理検査では悪性所見を認めなかった。造影CT検査にて茎乳突孔周囲の骨破壊を認め経過中に迷走神経(X)麻痺が出現した。typical SBOと診断し抗菌薬加療を行ったがX麻痺のみ改善しVII麻痺は残存した。症例2は糖尿病の既往がある76歳男性。鼻処置通院中に嚥下障害,左舌下神経(XII)麻痺を認め当科紹介となった。造影CT検査にて斜台部左側に骨破壊を伴う病変を認め全身麻酔下に上咽頭生検を行ったが,その際椎前筋後方から排膿を認めた。細菌検査で緑膿菌が検出され病理所見は悪性所見なくcentral SBOと診断し抗菌薬加療を開始した。経過中に左X麻痺を生じ治療によりXII麻痺のみ改善しX麻痺は残存した。麻痺出現の順番は炎症の波及経路を反映していると考えられた。今後SBOによる脳神経麻痺を改善させる因子等についての検討が必要と思われた。

  • 金子 光裕, 塩野 理, 福井 健太, 佐久間 巴, 二宮 啓彰, 荒井 康裕, 波多野 孝, 折舘 伸彦
    2023 年 3 巻 1 号 p. 31-34
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/03/31
    ジャーナル フリー

    Gemella haemolysansG. haemolysans)は通性嫌気性グラム陽性球菌で,ヒトの口腔,咽頭,上気道,消化管,泌尿生殖器の常在菌である。細胞壁が薄いためGram染色では脱色されることがあり同定が困難であるとされる。今回,G. haemolysansが起因菌と考えられた眼窩骨膜下膿瘍の症例を経験したので報告する。症例は79歳女性,既往歴に鼻外副鼻腔手術がある。義歯の調整後から左頬部,眼瞼の発赤腫脹,疼痛と見えにくさが出現し近医眼科より当院眼科へ紹介受診となった。視力低下と眼圧上昇認め,顔面単純CTで鼻性眼窩内合併症を疑われ当科受診となった。副鼻腔造影CTで術後性上顎嚢胞および歯齦部,眼窩下壁骨膜下の膿瘍形成を認めた。歯齦部を穿刺・切開排膿したところ眼圧の低下,視力の改善を認めた。緊急入院のうえPIPC/TAZ投与を開始したが,入院翌日に眼瞼腫脹の増悪と眼圧の再上昇を認めたため,全身麻酔下,内視鏡下に眼窩骨膜下膿瘍の切開排膿,経鼻眼窩減圧術を施行した。術後速やかに眼瞼腫脹と視力低下,眼圧上昇は改善し,術後5日目に退院した。歯齦部の膿瘍検体からG. haemolysansを検出した。鼻性眼窩内合併症は,保存的治療に抵抗性の場合,早急な外科的治療が必要である。

  • 角木 拓朗, 滝脇 正人, 横山 壽一, 小川 武則
    2023 年 3 巻 1 号 p. 35-40
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/03/31
    ジャーナル フリー

    結核性頸部・縦隔膿瘍の1例を経験した。患者は25歳の男性で,3年以上前にベトナムから来日していた。CTで上位胸椎の骨破壊を認め,脊椎カリエスに由来すると考えられた。造影CTでは頸部から縦隔にかけて多数のリング状造影効果領域と両頸部のリンパ節腫大を認めた。Th2椎体の骨破壊およびTh1,4,5椎体前面の骨吸収像を認めた。生検で乾酪壊死物質を含む膿汁を認め,結核PCRが陽性となり,結核性頸部膿瘍および縦隔膿瘍と診断した。外切開排膿ドレナージと抗結核薬による治療を行い再発なく経過している。

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