2023 年 3 巻 1 号 p. 7-13
2019年度のアレルギー性鼻炎の全国調査からスギ花粉症の有病率が著明に増加している実態が示されている。また,アレルギー性鼻炎と気管支喘息との合併率が高いことは知られているが,本邦でのアレルギー性鼻炎からみた調査報告は少なく,近年の耳鼻咽喉科を受診する花粉症症例における喘息の実態は明らかではない。今回我々は山梨県内と隣接地域の耳鼻咽喉科施設を受診したアレルギー性鼻炎患者3,804名を対象に1月から5月の花粉飛散時期における喘息症状の実態に関するアンケート調査を行った。医師から気管支喘息の診断を受けている症例は448例(12.3%)おり,直近12ヵ月の間に喘息症状があり,花粉飛散時期に喘息症状の増悪を自覚している症例は28例であった。また,喘息診断の有無に関わらず,喘息症状がある群では鼻症状が中等症以上の割合が高い結果であった。今回の調査から,喘息を合併する花粉症症例が一定の割合で耳鼻咽喉科を受診している実態が示されるとともに,喘息症状の悪化に花粉症による鼻炎症状の悪化が関連することが示唆された。また,喘息様症状があるにも関わらず喘息未診断で管理されていない症例も少なからずおり,花粉症診療の際にはこのような症例が耳鼻咽喉科を受診していることも念頭におき治療にあたる必要があると考える。