日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー感染症学会誌
Online ISSN : 2435-7952
原著論文
大阪市内の市中病院でのCOVID-19流行前と流行下における扁桃周囲膿瘍患者の受診動向
宇都宮 敏生田村 祐紀阪上 智史鈴木 健介八木 正夫岩井 大
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2023 年 3 巻 4 号 p. 149-154

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抄録

扁桃周囲膿瘍は,発症初期は軽微な症状であっても数日から1週間程度で激烈な症状が出現する,耳鼻咽喉科医による治療介入が必要な疾患である。我々は,2020年3月から始まったCOVID-19の流行に伴い,扁桃周囲膿瘍患者が医療機関への受診を控えることにより適切な時期に適切な治療を受けられなかった可能性があると考えた。今回我々は当院でのCOVID-19流行前と流行下で扁桃周囲膿瘍患者の受診状況,重症化の有無を比較検討したので報告する。対象は2018年3月から2022年2月を流行前および流行下に分け,その期間中に当院で治療を行った流行前29例,流行下41例の扁桃周囲膿瘍70例の扁桃周囲膿瘍の症例を対象とした。流行前と比較して,流行下の60歳未満の患者の症状発現から医療機関受診までの期間が平均1.9日延長していた。今回重症化の有無の指標として検討した初診時CRPは流行前の群が平均値8.35 mg/dl,流行下の60歳以上の群が平均値12.11 mg/dlと流行前の群と比較して流行下の60歳以上の群において増悪している傾向があった。初診時に喉頭浮腫を認めた症例は流行下の60歳以上の群で多く,膿瘍形成をきたしてから前医に受診した患者は流行下において多く認めた。しかし,今回の検討において気道狭窄による気管切開や頸部膿瘍へ移行するなど重症化した患者はおらず,治療に関しては医療機関への受診が遅れたことによる影響は大きくなかったと考える。

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© 2023 日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー感染症学会
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